NATROMのブログ

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自由競争と効率化

自家用車での通勤中、ラジオをよく聞いている。私の住んでいる福岡のAMラジオ放送の民放は、RKB(毎日放送)とKBC(九州朝日放送)である。これはもう福岡であるから、ホークス戦があるときには、必ずラジオで中継される。それは良いのだが、いったいどういうわけだか、RKBもKBCも、どちらもホークス戦を放送するのだ。私はホークス戦が聞きたいわけであるゆえに別にかまわないのだが、ホークス戦を聞きたくない視聴者にとっては面白くない事態であると想像される。

おそらくはこういうわけであろう。ホークス戦を聞きたいと思う視聴者が(仮に)20%、それ以外の番組(たとえば歌番組)を聞きたいと思う視聴者が(仮に)5%いたとしよう。ライバル局がホークス戦を中継していても、自局がホークス戦を中継すれば視聴者を分け合っても10%の視聴率が見込めるのに対し、歌番組を放送すると5%の視聴率しかとれない。しかもその場合、ライバル局は20%もの視聴率を得ることができるのだ。ホークス戦を聞きたいと思う視聴者が多数であるがゆえに、自局の視聴率を最大化しようとする自由競争の結果として、両局ともにホークス戦を中継しているのだろう。

しかしながら、視聴者にとっても、放送局にとっても、これは最適な状況ではないように思われる。自由競争を止めて、RKBとKBCが協定を結び、ホークス戦の半分をRKBが、残り半分をKBCが放送するようにすれば、歌番組を聞きたい視聴者はホークス戦が行われる日にも聞きたいラジオ番組が聞ける。放送局にとっても、ホークス戦を放送しない日の視聴率は下がるものの、ラジオ視聴者という全体のパイが増える結果として、平均すれば12.5%という、ホークス戦のみを放送していたときの10%と比べて、視聴率は上がる。ホークス戦を聞きたい視聴者も、これまで通り、ホークス戦の放送を聞ける*1

かように、市場原理にまかせれば効率化されるというのは幻想であることがわかるだろう。私としては、ホークス戦がない日に、RKBとKBCの両局ともにジャイアンツ戦を放送するのを止めて欲しいと書こうとしたはずなのに、なんだかすごい結論になってしまった。

参考サイト:■不幸を呼ぶ弁当屋(大西科学)

*1:ドカベン香川の解説のときに、もう一方の局にするという選択肢がなくなるというデメリットはあるが