NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

睡眠不足と健康

アメリカ合衆国における最新“睡眠事情”を伝える記事。


■寝不足だと寿命縮まる? 米国で睡眠薬需要が急増か(livedoorニュース)*1


米女性誌「グラマー」は「睡眠に関する驚くべきニュース」と題する記事を掲載、睡眠時間が8時間より少なくなると、思わぬ健康、心理面でのマイナスの結果が生じると警告した。健康面では、ストレス、がん、糖尿病、心臓病などを誘発し、寿命が短くなる恐れがある。米国人の睡眠時間は、世論調査の結果では、7割が7時間以下という。


そんなに「驚くべきニュース」だとは思わない。いったいなぜこういう記事が出るのか、裏を読みたくなってしまう。



 一方、米誌マザー・ジョーンズによると、米国で今、睡眠への関心が高まっているという。睡眠は、一種の「寝付きの悪さ」を意味する個人の問題だっただけに、医学の分野でもあまり注目はされていなかった。しかし、専門家の間で、睡眠不足と交通事故や病気、寿命の因果関係が論じられるようになり、脚光を浴びてきた。
 医薬品業界もこうした状況を見逃していない。少なくとも3つの睡眠を促進する新薬が発売される。米国人の10−15%が、不眠症を経験しているとの報告もあり、業界は、潜在需要は高いと踏んでいる。大掛かりな宣伝で、需要が急増するとも予想されている。


「睡眠に関する驚くべきニュース」が広く知られることによって、利益を得る人たちがいるわけだね。睡眠不足と病気や短い寿命と相関するのが事実だとして、睡眠薬による介入でその悪影響が小さくなるかどうかは、別個調べないとわからない。睡眠不足や不眠は、そのものが健康に悪影響をもたらしているのと同時に、悪い生活習慣等の別の要因が、睡眠不足や不眠及び、健康への悪影響をもたらしていると考えられるからだ。睡眠薬が不眠を解消したとして、不眠の原因となっている生活習慣を改善しなければ、健康問題は解決しないかもしれない。

*1:URL:http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__930913/detail