NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

ウコンで肝障害

■ウコンで症状悪化1人死亡 健康食品、肝障害が18人(河北新報社)


 肝臓の働きを高めるとされるウコンを粉末にした健康食品の摂取がきっかけとなって、東京都内に住む肝硬変の60代女性の症状が悪化し死亡していたことが、東京逓信病院が同病院の患者を対象に実施した調査で18日分かった。
 調査では、このケースを含めて1996年以降、18人がウコンなどの健康食品との因果関係が疑われる肝障害を発症。厚生労働省研究班の調査でも、比較的安全性が高いとされているウコンによる肝障害が相次いでいることから、同省は対応を検討している。


健康食品による肝障害が疑われる症例は、軽症を含めれば、結構ある。各肝炎ウイルスマーカー陰性で、腹部エコーでも異常なし、アルコール・薬物摂取なし、自己抗体も陰性、唯一疑わしい健康食品を中止したら、それだけで肝障害が改善したというケース。健康食品が本当に原因であったという証明は困難*1なので、あくまで「疑い」というだけであるが、健康な人ならともかく、肝予備能の低い人が健康食品を使うのはリスクがある。

そもそも、摂取し続けることによって健康になる万人向けの特定の食品など存在しない。何らかの作用のある食品ならあるだろうが、それならば副作用だってある。米や小麦といった主食以外の食品は、摂取し続けても安全であると確認されていない。健康になりたいのであれば、まず、禁煙と肥満の解消からだ。お手軽に健康になりたいと願うがゆえに、効果がはっきりしないばかりか、時には体に害のある健康食品をわざわざ高い金を払って購入するのだ。

健康な人が趣味で健康食品を摂取するのはまあいいだろう。誰でも、お金をドブに捨てる自由はある。しかし、病気の人に対して、安全性の確立していない健康食品を勧めるのは悪だ。ウコン・肝硬変でGoogleで本日(2004年10月21日)2位だったサイトより。このサイトがこれ以上Google上位にならないよう、リンクは張らない。


■Zイオン研究所のウコン・健康体験談のコーナー(ゼットイオン薬局)
ttp://www.z-ion.com/ukon/ukontaiken.html


クスリウコンで重症の肝硬変から健康を取り戻した   (男性)
 以前から肝臓病と心臓病、そして腎臓病で苦しんでいましたが、2年前からウコンを
飲み続けているうちに日ごとに調子がよくなり、今では医者から「ビールを飲んでもよ
い」という許可が下りるほど健康を取り戻しました。
 病名は肝硬変。肝臓機能がほとんど働いていないという重症で、心臓発作も出るよ
うになり、合併症として腎臓病も出て、全身にむくみがひろがり、とても苦しい毎日で
した。それがクスリウコンを飲み始めてから、日一日と快方に向かい、黒ずんでいた顔
もツヤツヤとしてきて、病気をする前よりも健康になったような気がしています。


体験談が事実であったとしても、「クスリウコンで重症の肝硬変から健康を取り戻した」とする男性の主張が客観的な事実とは限らない*2。患者さん自身が、医師の言ったことを正確に理解しているとは限らないからだ。この体験談を掲示している薬局は、「ウコンが肝硬変に効くとも言っていないし、病人にウコンを勧めてもいない。体験談を載せているだけ」と、言い逃れはできるだろう。しかし、こと健康に関する問題で、顧客をミスリードするような体験談を載せていることが、悪でなければなんだというのだ。


*1:健康食品を続行したまま様子を診ていても肝障害は改善したかもしれない。健康食品を再開して肝障害が再発すれば傍証にはなるが、そのようなテストはできない。

*2:医学的には客観的な事実でない可能性のほうがきわめて高い。