NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

毒ハムスター

うちのチビは「とっとこハム太郎」の歌が大好きだ。この歌から、ハム太郎がひまわりの種が大好きであることがよくわかる。というほとんど意味のないマエフリから、■ハムスターにかまれ死亡例(東京新聞)について。tf2さんKU。(KU。の使い方はこれでいいんですか?)


 埼玉県に住む四十代の男性が今年二月、飼っていたハムスターに指をかまれた直後に意識不明となり、搬送先の病院で死亡していたことが二十七日までに分かった。傷口からハムスターの唾液(だえき)が体内に入り、急激なアレルギー反応である「アナフィラキシー」が発生、持病のぜんそくを誘発したという。
 ハムスターなどペットの齧歯(げっし)類にかまれたのが原因のアナフィラキシーは一九九五年以降、広島県など全国で十七人報告され、十六人は大事に至らなかったが一人は植物状態になった。かまれた直後の死亡例は初めてとみられる。
 清田和也さいたま赤十字病院救命救急センター長は「常に起きるわけではないがアレルギー体質の人や、かまれる危険の高い獣医師は気を付けた方がいい」と注意を呼び掛けている。
この記事を読んだときに、まっさきに思い出したことは、うちのチビがハムスターにかまれたことではなく、ドーキンスによる以下の記述。(「盲目の時計職人」4章)

小さな変化が数多くの段階にわたって累積されるという考えは、とてつもなく強力な考えであり、それ以外には説明できないような莫大な範囲のことがらを説明可能にする。ヘビの毒はどのようにしてできてきたのだろうか?咬みつく動物はたくさんいるし、どんな種類の唾液にもタンパク質が含まれていて、傷口から入れば、アレルギー反応を引き起こすかもしれない。いわゆる無毒ヘビでさえ、咬みつけば人によっては苦痛な反応を引き起こすことがある。そこにも、ごくふつうの唾液から猛毒にいたる連続的な段階をもつ系列が見られる。
ドーキンスはこの本の中で、ダーウィン的な進化論を説明している。ダーウィン進化のキモは、(しばしば誤解されているのとは逆に)、漸進的な変化の累積だ。漸進的な変化ってのは、要するに、ほんのちょっとの変化ってこと。創造論者やインテリジェント・デザイン説支持者や今西進化論な人以外は、蛇毒はダーウィン的な進化を遂げたという考えに同意するだろう。無毒から猛毒に至る微小な変化の系列が存在する(存在した)はずであり、その最初のほうの段階が、人によっては苦痛な反応を引き起こす唾液中のタンパク質というわけ。

蛇毒の中間型が現存しているかどうかは私は知らないが、ヘビの毒腺が唾液腺に由来することは確からしい。ここから妄想。ハムスターの唾液に反応するかどうかに個人差があるように、ハムスターのほうにもアレルギー反応の起こさせやすさに個体差があるかもしれない。反応を起こさせやすいハムスターを選別し、人為淘汰していくとどうなるか。毒ハムスターを育種することは可能なのだろうか。