NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

ナカシマ先生に電話がかかってきた

医局の電話が鳴ったのでとってみたところ、病棟からだった。


「大久保さまという方から電話があって先生とってくれますか?」
「どちらの大久保さまですか?」
「それがよくわかんないんです」
大久保さんという患者さんには覚えがない。他の先生あてだったら、その先生の院内ピッチに連絡がいくはずだ。とにかく話を聞かないとよくわからん。

「はい、代わりました」
「大久保です。ナカシマ先生ですか?」
「いえ、内科の○○です。どちらのナカシマ先生にお電話ですか?」
「内科のナカシマ先生です」
「どちらの大久保さまですか?」
「中央の大久保です」
「どちらの中央ですか?」
「中央センターの大久保です」
「どちらの中央センターですか?」
「ナカシマ先生はいらっしゃるのですか。代わってください」
「お伝えしますので、ご連絡先を教えてください」
「ナカシマ先生は連絡先をご存知です。そちらにおられないのですか。至急連絡したいことがあるのです」
「中央センターの大久保だけではわかりませんので、ご連絡先を教えてください」
「ナカシマ先生はご存知です。お伝えください。切ります」
といって切れた。すぐに患者からの電話じゃないってことはわかった。どうして内科の医局にかかってきたかってことも。大久保氏は、おそらく不動産の営業マンである。税金対策としてマンションを売ろうとしているのだ。仕事中に営業の話をされてはたいそう迷惑なのである。外来中、ムンテラ中、処置中にそんな電話がかかってきたら最悪である。最近は、電話交換の段階で怪しい人からの電話はシャットアウトしてくれる。しかしながら、向こうも商売。いろんな手を考えてくる。スパマーがなんとかスパムフィルターを通す手段を考えるようなもの。

「九大の田中」からかかってきたことがあった。交換手は通さざるをえないし、大学医局に一人ぐらい田中先生の知り合いはいるものだから、電話には出る。でも、内容は営業トーク。所属を聞くようにしたかなんかで、もうかかってこなくなった。凄いのは、「武田製薬」からかかってきたこともあった。でも、内容は営業トーク。呼び出して、小一時間説教しようかと思ったね。だいたい、いきなりウソつくような相手から高い買い物しようかって馬鹿はいるのかね。なめてんのか。

今回の手口は、イキナリ病棟に電話をかけるという技。交換手は営業マンの手口をよく知っているが、ナースは知らない。言われるがまま医者に電話をつなぐであろう。しかし、今回すぐに化けの皮がはがれたのは、ウチの病院には、内科はおろか、すべての科を含めてもナカシマ先生はいなかったからだ。ナースも困って、医局に電話をまわしたのであろう。今回、ナカシマ先生になりすまさなかったのが悔やまれる。