NATROMのブログ

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毎年検診にしても偽陽性(誤陽性)が増えないことがありうるか問題

https://b.hatena.ne.jp/ublftbo/20220817#bookmark-4723943368801951746から。


毎年検診にしても偽陽性(誤陽性)が増えないことがありうるか問題。かの人物は深く考えていないだけだと思いますが、それはそれとして、たとえば、偽陽性が生じる原因が不変、かつ、検診時に前回の情報が利用可能なら、毎年検診にしても偽陽性は増えません。

たとえば、一次検査の胸部単純レントゲンで陳旧性炎症性変化を肺がん疑いとしてひっかけて、精密検査の胸部CTで肺がんは否定的だとされたとしましょう。これは典型的な偽陽性です。陳旧性炎症性変化は不変です。次回の検診では、前回のレントゲンと比べて変化がなければ肺がん疑いとはされません。毎年の検診でも隔年の検診でも、最初の検診で偽陽性となりますが、二回目以降は偽陽性になりません。

もちろん、偽陽性が生じるのは陳旧性炎症性変化だけではないので、現実には、毎年検診にすれば偽陽性は増えるに決まっていると思います。理論上は、毎年検診にしても偽陽性が増えないことはありうるよ、という話。「偽陽性となる病変は、検診開始時からずっと不変であり、それ以外の病変が原因の偽陽性は一切起こらない」という「非現実的な仮定」を置かないかぎりは、偽陽性は検査頻度を上げれば増えます。

実際の臨床データにおける隔年対毎年のマンモグラフィの比較では、当然、毎年のほうが偽陽性が多いのですが、単純に検診の機会が2倍になったから偽陽性も2倍とはなりません。偽陽性の一部は、不変の病変を乳がん疑いとして拾っているからだと考えます。