NATROMのブログ

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甲状腺がん検診のメリットは概算ですら定量化できない(2018年4月17日)

■コメント欄によると、「早期発見メリットとなる可能性があります」と主張するnagaya2013 さんは、そのメリットを概算ですら定量化できないそうです。その理由は「甲状腺の機能維持を対生命喪失で係数化できないから」だそうですが、意味がわかりません。医療介入の効果は、たとえば以下のような問いから考えます。

・何人を検診すれば、検診しない場合と比較して、甲状腺の機能維持ができるのですか?

・何人を検診すれば、検診しない場合と比較して、甲状腺がん死を減らせるのですか?

これらの問いに誠実に答えようとすると、福島県における甲状腺がん検診がとても推奨できるものではないことに直面せざるを得ません。だから、そのような問いから逃げざるを得ないのでしょう。

また、nagaya2013 さんは、「毎日1万人の自然死があるからといって1人の過失致死が許されないのと同じ」と主張しますが、やはり意味がわかりません。それはつまり、

一人の被ばくによる甲状腺がん死も許されないので、どれだけの過剰診断や偽陽性や前倒し診断による病悩期間の延長といった新たな被害者が生じようとも、検診を続けるべきである。ということでしょうか?

しかも、それだけの犠牲を支払ったとしても、被ばくによる甲状腺がん死を減らせるかどうかもわからない、たぶん減らさない、ということも含めて、お答えくだされば幸いです。