NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

「提示されたページに飛んで、そこに出てきた文章が「本文」だと思うに決まっている」

有用な医学論文のほとんどがPubMedで検索できます。論文を提示する方法にはいくつかありますが、ネット上ではPubMedのID番号(PMID)、もしくは、URLを提示したりします。たとえばこんな具合。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24192252

リンク先を見れば、該当論文が2014年のLanet誌に掲載されていることがわかります。要約も読むことができます。本文を読みたければ、該当するLancet誌を図書館の棚から探し出してきたり、ネット経由で本文のファイル(だいたいはPDF)を入手するかします。有料のこともあれば無料のこともあります。誰もが図書館や有料論文にアクセスできるわけではないので、本文を読まないこと自体はいいんです。私も、本文を読めなかったり、ざっと読み流すだけだったりすることがあります。問題は、窓際記者の独り言さんが、PubMedの仕組みについてわかっていなかったということです。必要に応じて上記論文を提示したんですが、なんと窓際記者の独り言さんは、「提示されたページに飛んで、そこに出てきた文章が「本文」だと思うに決まっているでしょう」*1とおっしゃいました。

提示されたページって、PubMedの個別ページですよ?Abstract要約に決まっているじゃないですか。すごーく短い論文で要約だけで全文ってこともなくはないですが、この論文はそうじゃないって見ればわかるでしょう。そもそも、該当ページにはちゃんとAbstractと書いてありますし、Full text linksもあります。リンク先には"To read this article in full you will need to make a payment"とあって本文は有料だと英語が読めればわかります。

そもそも、医学論文を読む習慣があれば、「提示されたページに飛んで、そこに出てきた文章が「本文」だと思うに決まっている」なんて勘違いはしません。つまり、窓際記者の独り言さんは、医学論文を読む習慣もなければ、探す手段ももっていないわけです。いまどき、医師でなくてもPubMedを使いこなす人はたくさんいますが、まあ非専門家にとってはハードルが高いかもしれません。それはいいです。請われれば教えます。

しかし、医学論文を読む習慣もないのに、他人に向かって「あの論文は細胞診とHPV検診の比較であって、細胞診と併用検診の効果比較ではありませんよ。その違いを理解してます?」*2などと言い放つのはいったいどういうわけでしょう。なんでそんなに自信たっぷりなんですか?本文を読んでいないどころか、本文が別に存在するということすら知らなかったというレベルなのに*3