NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

林衛さんにお尋ねして、いまのところお返事がもらえていない質問のリスト2

  • 「肺がん検診有効は痰の検査とあわせた場合だけ」とは、がんセンターのスライドからは読み取れないってことは同意できますか?

「過剰診断はスルーしていたがんセンター」という林衛さんの発言*1に対し、その認識が誤っていることを示すために国立がん研究センターによる「がん検診-何を選んでどう受ける」のスライドをご紹介したところ*2、「なとろむさんのご紹介のスライドによると,肺がん検診有効は痰の検査とあわせた場合だけ」*3とお返事がありました。実際には、紹介したスライドにはそんなことは書いていません。林衛さんは、テキストに書かれていることを読み取る能力に難があるのかもしれません。


  • 林衛さんがこれまで発表されてきた著作のデータの中には、林衛さんが自身がオリジナルデータを扱える立場になく、また公表もされていないデータがあったということでしょうか?どうやってデータの妥当性を検証するんです?

「過剰診断とはいえない有効性が示されるようになったデータ」「甲状腺がんの治療成績の向上についてのデータも紹介できるでしょう。そのデータでは,甲状腺がんの検診によって死亡率が低下しているとのことです」*4という林衛さんの発言をめぐって、4度にわたって「甲状腺がんの検診によって死亡率が低下している」データについて質問したところ、やっと「いま,検討中です」*5、「オリジナルデータを扱える,そこまでの立場ではありません」*6とのお返事がありました。

しかし林衛さんは、「いま仲間と編集作業を進めている本でも,甲状腺がんの治療成績の向上についてのデータも紹介できるでしょう」と述べていたのです*7。ご自分が編集に関わっている本のデータについて、オリジナルデータを扱えない、公表されたデータでもない、というのであれば、そのデータの妥当性はいったいどうやって検証したというのでしょうか。伝聞で検証なしに本に書いているのでしょうか。

実際のところ、甲状腺がんの検診によって死亡率が低下しているというデータは存在せず、林衛さんが何か勘違いをしているか、あるいは嘘をついていると私は考えています。そうだとしたら、林衛さんがなかなか死亡率低下データについての質問に答えようとしなかったことも説明できます。


  • コクラン2011では「一次予防のためのスタチン投与が効果的だという証拠は限定的」と述べられているのですか?述べられているとして該当する原文はどの部分ですか?

林衛氏さんによる『コレステロール大論争:「動脈硬化学会VS脂質栄養学会」論点の腑分け』(Medical Bio 2011年3月号 Page73-78)には、『(コクランの)結論には、既往症のない人への「一次予防のためのスタチン投与が効果的だという証拠は限定的」と述べられている』と書かれています。しかし、参考文献に挙げられているコクランレビューにはそのような文章は存在しません。それどころか総死亡や心血管イベントをスタチンが抑制すると書かれています。林衛さんに「テキストに書かれていることを読み取る能力に難がある」ことを示す一例かもしれません。あるいは、意図的に不適切な引用をしているのでしょう。

「この匿名のお医者さんは,私がいくら文献をあげても,その文献の内容を無視し続ける」*8とすら林衛さんは発言しました。文脈から「匿名のお医者さん」は私(NATROM)であることが明らかです。そこまで言うなら、文献をあげるだけでなく、その文献のどの部分に「一次予防のためのスタチン投与が効果的だという証拠は限定的」と述べられているのか、明確に示してください。