NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

cyborg001さんに答えて欲しい質問リスト(2015年9月21日)

2015年9月上旬から中旬にかけて、cyborg001さんとツイッターにて対話を行いましたが、■時系列研究でも甲状腺がん検診ががん死を減らしたとは言えないで書いたように、cyborg001さんと対話を続けようとする気力を失いました。cyborg001さんが議論するに値する相手であるかどうかについては、十分に示されたと考えています。

さて、2015年9月21日にcyborg001さんは「NARTON氏にはすべて答えています」とツイートしました*1。しかしながら、この主張は事実ではありません。以下に示す質問について、cyborg001さんは答えていません。質問の中には、何度も答えを要求したにも関わらず、放置されたままのものもあります。cyborg001さんは、「NARTON氏にはすべて答えています」というツイートを撤回するか、もしくは、以下の質問にお答えいただくよう、お願いいたいます。実際には答えていないにも関わらず「既に答えた」記憶違いをしているという可能性もありますので、お手数ですが、「既に答えた」場合は、回答を再掲するか、もしくは回答したツイートを示していただくよう、お願いいたします。



1.「韓国の甲状腺がん増加はエコー検査による過剰診断だけでは説明できない(本物の増加も含まれる)」という主張と、「しかし、そうはいっても増加の大半は過剰診断によるものである」という主張が両立することに、同意できますか?

「甲状腺がんの増加は過剰診断だけでは説明できない」という主張と「増加の大半は過剰診断」という主張とは両立します。単純な論理の問題です。しかしながら、「増加の大半は過剰診断」という主張に対する反論として「過剰診断だけでは説明できない(「真の増加がある」)」という主張が持ち出されることがしばしばあります。単純な論理の問題を理解できないのか、それともわかった上であえて理解できないふりをしているのか、どちらかであろうと思われます。前者であれば能力不足であるし、後者であれば不誠実です。



2.「韓国の例を援用しながら『福島も過剰診断』という印象操作」を私が行ったという根拠(具体的なツイートの引用など)を提示してください。

何度もご質問したのですが、明確なお返事をもらっておりません。「○月○日のツイート(URL)にて、NATROMは『〜』と主張しており、これは『福島も過剰診断』という印象操作とみなされても仕方がない」、あるいは、「NATROMが印象操作をしたというのは私の勘違いであったので主張を撤回する」というお返事を期待していたのですが。既に何度も言及していますが、当初から私は「韓国の事例は成人の話であり、小児の甲状腺がんにも適用できるとは限らない」と主張しています。明確なお返事がない場合、印象操作をしているのは私ではなく、cyborg001さんのほうであるとみなさざるを得ません。



3.韓国における甲状腺がん死亡率の年次推移(5年おき)の図[ https://twitter.com/cyborg0012/status/639334710892630016 ]は、韓国における過剰診断の存在を否定できないことはご理解されていますか?*2

これも、明確なお返事をもらっておりません。「はい、理解している」または「いいえ。提示した図によって過剰診断の存在を否定できると考えている」という答えを期待していたのですが。前者であれば、ご提示の図以外の過剰診断を否定する根拠を出していただけるであろうし、後者であれば、「なぜ死亡率の経時的変化では過剰診断を否定できないのか」についてご説明しようと考えておりました。「議論をする際には相手の主張をしっかり理解する必要がある」と私も考えます。cyborg001さんの主張を正確に理解したいのです。ぜひとも明確なお返事をお願いしたします。



4.「韓国ではスクリーニングブームが始まった2000年前後から年齢調整死亡率が低下している」と、現在(2015年9月21日)も主張しておられますか?主張しておられるとして、連続的な死亡率の推移およびAPC(annual percent changes:年次変化率)に対して具体的な反論をお願いします。

「韓国ではスクリーニングブームが始まった2000年前後から年齢調整死亡率が低下している」とのことですが、■韓国の最近の甲状腺がん死亡率の推移において、(5年おきではなく)連続的な死亡率の推移の提示、および、APC(annual percent changes:年次変化率)においても有意な変化をしていないことを示しました。しかしながら、cyborg001さんからは具体的な反論も、主張の撤回もなされておりません。



5.Lancet誌およびNEJM誌に韓国における甲状腺がんの過剰診断について警鐘を鳴らす論文が掲載されました。しかも、「手術する基準を見直そう」とかではなく、検診や早期発見そのものに対して否定的です(■韓国における甲状腺がんの過剰診断)。cyborg001さんのご主張と真っ向から対立しています。成人の甲状腺がんの過剰診断の問題について、論文の著者、編集者、査読者と比較して、ご自身の見識が上回っているとお考えですか?

このような問いかけに対して、しばしば「一流誌だから正しいとは限らない」という的外れな反論がかえってきます。もちろん、「一流誌だから正しいとは限らない」。その通りです。誰も「一流誌だから絶対に正しい」などとは主張していません。私の主張したいことは、少しばかり勉強しただけの非専門家よりかは、一流誌に掲載された複数の論文のほうが正しい可能性が高い、ということです。少なくとも、医学界のコンセンサスが成人に対する甲状腺がん検診に否定的な理由を十分に理解することは無駄ではないと考えます。cyborg001さんは、過剰診断の議論について十分な理解をした上で韓国の甲状腺がんの過剰診断論に反対しているのではなく、福島県の小児の甲状腺がんの議論に都合が悪いがゆえに反対しているように(おそらくは正義感からだろうとは思います)、私には見えます。



ほかにもお答えしていただいていない質問、あらためてお聞きしたい質問もありますが、あまりたくさんだと大変なので、これくらいにしましょう。もちろん、こうして私が質問した以上、私の方もcyborg001さんからのご質問に答える用意があります。しかしながら、ツイッター上では、私が何度質問してもcyborg001さんからのお返事はなく、次々とcyborg001さんが質問するだけであったこと*3、『「なとろむはcyborg001 さんの問いに答えていない」と主張したいのであれば、具体的に番号を振ってご質問してください。』*4とツイートしたにも関わらず、番号の振られた質問はなかったと、私は認識しております。対話の途中から気力が萎えて、あまりにもくだらない質問にはお答えしておりません。ただ、私がくだらないと考えていても、cyborg001さんはそうではないとお考えかもしれません。cyborg001さんが重要だと考えるご質問があれば、ご面倒ですが、再度、ご質問していただければ答えます。

*1:https://twitter.com/cyborg0012/status/645865737194573824

*2:念のため。「過剰診断の存在がまったくゼロだとは言っていない」という類の反論が予想されるが、文脈上、Ahn(2014)やLee(2014)がいう意味での過剰診断のことを指しているのは明確である。

*3:https://twitter.com/NATROM/status/640740671033180160

*4:https://twitter.com/NATROM/status/640740705502015488