NATROMのブログ

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生体肝移植を受けて


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■生体肝移植を受けて (光文社新書) [新書] 是永 美恵子 (著)。


著者は生体肝移植のレシピエント。B型肝炎キャリアから肝細胞癌を発症。いったんは治癒切除を受けるもすぐに再発。肝内多発転移のため、手術は行わず、動注化学療法を行っていた。当時、肝細胞癌に対する肝移植は、京都大学しか行っていなかった。

実弟より肝移植を受け(夫は血液型不適合)、少なくとも本書が出版された時点では再発なし。当然、全額自費である。肝細胞癌に対する肝移植は2004年1月から保険適応となっているが、ミラノ基準内に限られるので、本症例は現在でも保険適応外である。

患者サイドの本音が書かれているので参考になる。面と向かっては、なかなか患者は医師に不満を述べないので、こういう本はありがたい。医学的な内容は正確だ。本人は看護師、夫が外科医とのことである。肝移植が治療の選択肢になっている患者さんに勧めたい本である。