NATROMのブログ

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最適な案でなければ賛成してはならないのか?(2010年11月4日)

id: Zarathustra1951-1967さんの■医療:高額療養費見直し試算に関しての備忘録 - Zarathustra1951-1967の日記に対して、一生懸命コメントを書いたけど、コメント欄がなかった…。せっかく書いたので。トラックバックは通るかな?


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「この件に関してあなたともう会話する気はありません」とのことですから、このコメントも削除されるかもしれませんが、一言言っておきます。ご指摘のように、現行の高額療養費制度についてさまざまな問題点があることには同意いたします。年収800万台の人のグリベック負担が重いことも同意します。正直言いまして、Zarathustra1951-1967さんが、私の発言の何に対してそれほど憤っているのか、未だに理解できかねております。

「高額療法費制度を見直して、年収の高い人の負担を引き上げる」という点については、Zarathustra1951-1967さんも賛成するのですよね?もちろん、これだけではまったく不十分ですし、年収800万台の人はかえって負担が重くなるでしょう。満点の対策ではありません。しかしながら、満点ではないからといって、「年収の高い人の負担を引き上げる」制度の見直しに賛成するのは「これはひどい」ということになるのでしょうか。

年収800万台の人の負担は据え置きか、あるいは軽減して、さらに高収入の人の負担を増やすという案であれば良かったのですか。しかしながら、高収入の人の数は相対的に少なくなります。それで財源が賄えるのでしょうか?その点を質問したのですが、明確なお答えがありません。高収入だから払えるだろうと、あまりに高負担にすると、やはり「グリベック負担、軽すぎますか!?」ということになります。それに、あまりに高収入な人に過大な負担をかけすぎると公的保険から抜けられます。

すでに、どのように負担を配分しようとも、どの人にとっても「軽すぎる負担」で済むという配分は存在しなくなっているのです。たしかに、年収800万台の人のグリベック負担は重いです。しかしながら、年収300万円以下の限度額を引き下げ、年収800万台の人の負担を増やすというのは、これまでよりかはましな選択なのではないですか。これだけで財源にならないのは確かですが、もともとのブクマコメントでも、所得が高い人からは相応の保険料を取れ、と私は書きました。保険料ですから、病気になったときではなく、健康なときにです。

「遠い将来や極端でありそうも無い例を考えても仕方ない」のは、そうかもしれませんが、「お金の切れ目が命の切れ目」のエントリーを、今回の高額療法費制度見直しと結び付けたのは、私ではなく、Zarathustra1951-1967さんです。
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