NATROMのブログ

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大野病院の産科医は妊婦を「帝王切開死させた」のか

スポニチの見出しが酷い件について。


■帝王切開死させた産科医に無罪判決(スポニチ)


「帝王切開死させた」というのは検察側の主張である。「帝王切開死させた疑い」や「帝王切開死させたとされる」という表現ならともかく、断定的な見出しは不適切である。ただ、見出しは酷いものの記事内容は普通であり、記者は不勉強ではあったかもしれないが、悪意はなかったと思われる。

医療の不確実性に対する無理解が、無罪判決が出てもなお、帝王切開死させたという見出しをつけさせたのだろう。出産ぐらいで妊婦が死ぬはずがあろうはずがない、だから妊婦を死亡させた誰かがいるはずだ、という考えである。現実には「可能な限りの医療を尽くした」にも関わらず、病死することはありうる。

ただ、医療の不確実性に対する理解は進んでいるように感じられる。以前は、「医療ミスの大野病院」*1、「帝王切開で妊婦死亡させた執刀医、無罪を主張」*2など、問題のある見出しが散見されたが、今回はざっと見た限りでは酷い見出しはスポニチぐらいだった。

*1:福島民報。元記事はリンク切れ。ブックーマークのURL:http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.fukushima-minpo.co.jp/news/kennai/20060302/kennai-20060302095531.html

*2:読売新聞 URL:http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070126ik09.htm