NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

最初に採用するとしたら製薬会社

水商売ウォッチングの掲示板兼ゲストブックで、「燃費向上グッズ」の話題があった。apjさんのコメント。


■最初に採用するとしたら消費者じゃなくて自動車メーカー


 何せ名だたる自動車メーカーですから、エンジンの燃焼試験も効率の試験も大変に確かです。巷に溢れるこの手のグッズは、一度はテストしているようです。その結果、効果はゼロとは断言できないが(ゼロであることの証明は事実上不可能なので)、仮にあったとしてもごくごく微小で、グッズを搭載することによる自動車の製造コスト増を考えると全く引き合わないそうです。
 そんなに劇的にエンジンの効率を上げるモノがあったら、車屋さんが真っ先に採用して搭載するはずなんですよね。それだけでもライバル会社に大差をつけることができますから。


まったくだ。この考え方のいいところは、個々の燃費向上グッズの細部の知識が不要なこと。「電磁波を反射する元素結晶体ってなんだよw」などと、いちいち突っ込む必要がなくなる。厳密に言えば、まだ自動車メーカーの目に留まっていないだけの、本当に革新的な技術が使用されているという可能性がゼロであるとは断言できない。けれども人生は短いので、わずかな可能性をいちいち検討するのは時間の無駄であろう。思考の節約になる。同様のことは代替医療の分野でも言える。治療者の特殊な能力が必要と主張されているものや、生活習慣や食習慣の改善を勧めるものはともかく、高価な商品を買わせるタイプのものであれば、こう考えてみよう。



そんなに治療効果のあるモノがあったら、薬屋さんが真っ先に採用して販売するはずなんですよね。それだけでもライバル会社に大差をつけることができますから。


代替療法支持者は、製薬会社が利益を守るために圧力をかけて代替医療の普及を邪魔しているとしばしば主張する*1。わかりやすい陰謀論だ。陰謀論者が見落としているのは、複数の製薬会社が競争しているという事実である。


*1:たとえば、「その学会誌に投稿している研究者が、抗がん剤製造メーカーから研究資金やキックバックを得ていないという保障が何処にあるのか。レフェリーは公正な判断を下せるだけの十分な立場にあるのか」  URL:http://neuroendocrine-tumor.cocolog-nifty.com/pancreac_endocrine_tumor/2006/08/post_8992.html#comment-30027345