NATROMのブログ

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僻地病院Ⅰ型(激症型)の症例

水原郷病院は新潟県阿賀野市の市立病院である。一般病床321床(うち療養病床 42床)とあり、地域の中核病院だと思われる。公的病院の例に漏れず、赤字が続き、阿賀野市によって「水原郷病院経営改革審議会」が開催された。その模様はネットで公開されている。たとえば、以下のような議論がなされている。


■第3回 水原郷病院経営改革審議会(平成17年10月25日)


外来患者数も減っており、人間ドックでも1日10人くらいの利用者で、しかも医師の出番は最後の診察のときだけのようだ。これまでも郷病院の医師は疲弊しているという話は聞かれたが、本当に疲弊するほどの仕事量なのか。

「レントゲン写真、眼底写真、心電図等の検査結果の診断等、後方で支えているのは全て医師である」「救急車を受けた当直時には眠れない状態で翌朝を迎え、翌日も夜中まで勤務をするのが病院の普段の仕事である。その上に、人間ドックなどの執務もある」という指摘に対し、


医師に働く意欲がないように聞こえるが。


■第4回 水原郷病院経営改革審議会(平成17年11月9日)


患者さんイコールお客様という考え方を持ってもらうため、ホテルやデパートの接客マナーを、郷病院のスタッフ全員が研修、習得し、常識ある接客をしてもらうということ。

などといった、具体的な提案がなされた。使命感で歯を食いしばって現場を支えている人間の耳に入るような場で、「ホントに頑張ってんの?」「お前、意欲ないだろ」などと言い放ったんだね。その言葉が影響したのかしなかったのかは分からんが、このような結果に。


■水原郷病院の医師が大量退職(新潟日報 平成18年1月27日)


 阿賀野市立水原郷病院(三浦義昭院長)で常勤医師の半数近くにあたる11人が1月末から4月末までに退職を予定し、同病院が機能を大幅に縮小する方針を固めたことが26日、分かった。大量退職の背景には「過重な勤務状況」があるといわれ、開業などの事情も重なった。医師の補充ができなければ、夜間の救急医療や新規入院の停止などに追い込まれる。
 同病院の常勤医師26人のうち、明確に退職の意思を示したり、手続きを進めたりしている医師は内科4人をはじめ外科、神経内科、整形外科、皮膚科、眼科の計11人。開業、育児、高齢などを理由に挙げている。


水原郷病院は、大量退職という事態になった。大量退職なら異常事態ということで、ニュースにもなるし、対策も考えられるだろう。どこかの病院のように、1人、2人とポツポツと辞めていくようなところは注目されない。どちらがいいのだろうねえ。