NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

待ち時間を短くしよう

長い長い待ち時間をなんとかしようってことで完全予約制にした病院があったんだけど、結局のところ、マンパワーを増やさないと問題の解決にならないんだよね。患者が殺到していたところに、医師も増やさんと予約制にしたところで、本質的な待ち時間が減るわけない。金を余計に払うから早く診ろという人が出るのは当然。


■国立がんセン夕ー中央病院、自由診療枠を新たに(言売売)


国立がんセン夕ー中央病院(東京都中央区)は、1日、「完全予約制」に加え、公的健康保険を使用しない自由診療枠を増設することを発表した。同病院では、患者の急増に対し、これまで待ち時間が初診患者で4、5時間、予約患者でも3時間となっていたのを改善するため、平成18年4月より、原則としてすべての患者の診療を完全予約制とし、かかりつけ医が所定の用紙をファクスで中央病院に送り申し込むと、患者あてに診療日を連絡する方式を採用した。

待ち時間を1時間以内に抑えるのが狙いだったが、完全予約制度の施行直後より予約が殺到し、科によっては4週から最大で6週間後にしか診察できない結果となった。「病院での待ち時間が減っても、4週間も待たされるのでは意味がない。待っている間に、がんが進行して手遅れにならないか心配だ」などという苦情が寄せられていた。自由診療枠を使えば3日〜1週間待ちになる見込み。

同病院は、「かかりつけ医からの情報から待てないと判断した患者を優先していたが限界がある。自由診療枠では通常の検査・治療もすべて自費になるが、患者の選択肢が増えるのはよいことだと思う。最先端の治療は、科学的根拠があっても保険適応が通っていないものもあり、保険診療の枠にとらわれない質の高い医療を提供できるようになる。自由診療から得られた病院の利益は、より性能の良い検査機器などの設備投資などにまわるため、保険診療の患者のメリットにもなる」と説明している。

記者は、待ち時間の問題がまったく解決していないことに気付いているのだろうか。要するに、金持ちなら先に診ましょうということ。お金を払えない人は、やっぱり後回し。というか、お金持ちが優先ということになれば、待ち時間はさらに長くなる。「工夫次第では待ち時間を短縮できるはず」などと仰る御仁もいるけれども、コストをかけないとどうしようもないのは明らかだ。コスト、アクセス、クォリティ(医療の質)の3つうち、2つしか選べることができない。完全予約制はアクセス制限だし、自由診療はコストの負担が増す。どこかのオリックス会長が言っていたように、「家を売ってでも高度医療を受けるという選択」が可能な時代になった。良かったね。


参考:
 ■国立がんセンター 来月から完全予約制 待ち時間限界(Sankei Web)
 ■がんセンター患者殺到で完全予約制(nikkansports.com)