NATROMのブログ

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指摘されないと気付かない日本語の不思議


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■ダーリンの頭ン中

小栗左多里 & トニ−・ラズロ 著。小栗左多里が漫画家で、トニ−・ラズロがその夫。トニ−はハンガリーとイタリアの血を受け、アメリカで教育を受けたとのこと。前作の■ダーリンは外国人では、生活する上での価値観の違いが描かれていて、こちらもたいそう面白かったのだ。というわけで、今回、■ダーリンの頭ン中を妻が買ってきた。今作品は語学がメインの話題。 

たとえばこういうの。「英語は文字通りに発音しないので聞き取りが難しい。一方、日本語の音は単純で一つの『かな』に一つの『音』だ」という主張に対し、トニーは反論する。日本語の発音も十分複雑であるとのこと。例として、


するめです
と日本語で発音する場合、するめの「す」は「う」の音が入っているのに対し、文章の最後の「す」は「う」は入らずに空気が抜ける音であると。発音してみたら、確かにその通りなのだ。それから、

はんのう
はんぱ
はんこ
はんを
はん
「ん」の発音が全部違うのだそうだ。「ん」のところで舌の位置を確認してみ。全部違うかどうかはわからないが、確かに明らかに異なる発音なのだ。トニーによると「いろいろ説があるけど、だいたい3つから5つに分類されている」らしい。語学に詳しい人なら知っているのかもしれんが、私は指摘されて初めて気が付いたよ。「いろいろな説がある」というところもすごい。こういうのを研究している人たちがいるのだなあ。

他には、「えいが」は「えーが」、「おうさま」は「おーさま」、「ひまわり」は「ひまーり」と発音している。「外国人にしてみれば字の通りに覚えてるから、ちょっと違うと聞きとれないことだってあるんだよ」。なるほど、お互い様だったのか。発音だけではなく、漢字や語源の話題もある。活字の本は自分の興味のある分野か、でなければ必要があって読むだけなので、なかなか違った分野の本を読む機会がない。マンガで違った分野の知識にふれると興味が湧く。語学も楽しいのだろうなあ。