NATROMのブログ

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不思議現象をどう考えるか


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■クリティカルシンキング 不思議現象篇

古典ではマーティン・ガードナー の奇妙な論理や、有名なところではトンデモ本「と学会」のトンデモ本の世界といった系統の本。「不思議現象(原文ではWeird things)」とは、超自然現象・超常現象などと呼ばれているもの。占星術とか超能力とか霊能力とかね。不思議現象を批判する本はたくさんあるのだけれども、この本の特徴は、不思議現象をどう考えるのか、という方法論を提示していること。


…本書の主たる目的は、偽りを暴くことでも、特定の主張を支持することでもなく、どの主張についてもあなたが自分自身で評価を下せるように、クリティカルシンキングの原則を説明することである。これらの原則の適用方法を具体的に説明するため、本書は多くの途方もない主張を分析しているだけでなく、それがおそらく真実であるとか、あるいは、おそらく虚偽である、といった結論も提示している。しかし最も大きな関心を払っているのは、その主張がそっくり受け入れられるか、あるいは却下されるかということではなく、あくまでも原則を注意深く使いこなすことである。(原著者まえがき)
「占星術はこれこれこういう理由で信用に値しません。霊能力はこれこれこういう理由で信頼できません」というのを延々と述べても、その本に述べられていない不思議現象に出会ったときにどう考えればいいのかわかんないよね。そのときに役に立つのがクリティカルシンキングというわけ。科学哲学や心理学の話題を含めて、方法論を重視している。その一方、個々の不思議現象の扱いはそれほど深くないが、ESPを含めた超心理学、N線、UFO、占星術、進化論と創造論、ホメオパシーなどの代替医療、ダウジング、臨死体験など幅広く扱っている。残念なことに、割愛された部分もある。

クリティカルシンキングを学ぼうとする多くの人に手軽に手にとってもらうため、日本ではなじみの薄いいくつかのトピックやコラムは割愛せざるを得なかった。(訳者まえがき)
私などはそういうものこそ読んで面白いだろうと思うのだが、私は想定読者とは違うのだろう。訳者の一人、菊池聡は、超常現象の心理学という本を書いている。銀河英雄伝説や機動戦士ガンダムが引用されていて、こちらも面白い。