NATROMのブログ

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教科書用ステッカーいろいろ

アメリカ合衆国では、進化論教育に関して議論がある。今度は「教科書に但し書きをつけろ」とのこと。

■生物の教科書に進化論を疑う但し書き、保護者が提訴(Wired News)


 コッブ郡の教育委員会は2002年、数百人の保護者――その多くは宗教的保守派に属する――からの強い要望に応えて、生物の教科書にこの但し書きを貼り付けた。これは教室内で宗教を宣伝するもので、憲法に定められた政教分離の原則に違反しているという意見が出されたが、委員会側はこうした指摘に取り合わなかった。
 ステッカーには、以下のような文面が記されている。「本教科書には、進化に関する記述が含まれる。進化は生物の起源に関する一理論であって、事実として確認されたものではない。この記述には偏見なく接したうえ、注意深く内容をあらため、批判的に熟考するべきである」

言うまでもないことだけど、進化は生物の由来を説明する科学的な仮説であり、もはや事実と言っていい。仮説なのに事実であるとは奇妙に思われる方もいるかもしれないが、ここでいう「事実」とは、「既に十分に検証されており、将来否定される可能性がきわめて低いと考えられる仮説」という意味である。太陽の周りを地球が回っているという仮説は事実である。誰も太陽系の外から地球を眺めた人はいないけれども、それでも現在手に入る膨大な証拠は、地動説の正しさを支持している。生物進化も同様だ。直接的な観察がなされていないからといって事実とみなさないのであれば、地動説のような科学的仮説も事実ではないと言える。

科学は絶対ではない。将来、生物進化を否定する証拠が出され、進化が否定される可能性はゼロではない。それは同様に、地動説や相対性理論やそのほかさまざまな科学的仮説に当てはまる。創造論者のよくある手口は、「科学は絶対ではない」という科学的仮説に共通する特徴を、進化のみにあてはめるというものだ。そう、進化は仮説であり、絶対に正しいと証明されたものではない。せいぜい、地動説と同じ程度にしか正しくないのだ。というわけで、教科書につけるステッカーいろいろ。

■Textbook disclaimer stickers

一番左上が「進化は批判的に熟考されるべき」って奴で本物。「地球の年齢は40億年」「プレート・テクトニクス」「地球は丸い」「重力」「地動説」「特殊相対性理論」といった説に懐疑的な保護者用のステッカーも用意されている。創造論の本に張るためののステッカーも。