NATROMのブログ

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嘘と真っ赤な嘘と

■東大、公立出身者が増加=「親は高額所得者」間違い−03年の学生生活実態調査(時事通信)


 また、これまで平均値を取って「1000万円以上」といわれてきた保護者の年収が、年収別の分布で詳細に見ると、1050万円未満の層が7割程度(03年は72.7%)だったことも判明。450万円未満の層も03年で13.9%で、池田教授は「東大生の親に高額所得者が多いというのは間違い」とした。 

統計でウソをつく法(信頼できたころのブルーバックスだ、名著)によれば、算術平均、中央値、最頻値のうち、もっとも都合のよい数字を選ぶんだよ。「平均値」ってのは、算術平均を指す。正規分布に従うデータであればこの三者は同じ値をとるが、年収はそうではない。算術平均だと、ごく少数の超高年収者の影響が大きくなる。集団のメンバーのほとんどが「平均」以下ということになる事態だってありうる。そうした「平均」が集団を代表する数字としてふさわしいかどうかは場合による。

東大生の保護者の年収だと、算術平均はもちろん、中央値や最頻値も集団を代表する数字としては不適切であるように思う。記事にあるように年収別の分布のほうが良いだろう。もちろん、これだって十分とは言えないだろうが。他の大学との比較や年収の調査方法について知りたいところではある。