NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

半減期を計算する謎の式を提唱(2011年7月25日追記)

■武田邦彦 (中部大学): 原発 緊急情報(58) これから:セシウムを防ぐ日常生活


セシウム本来の半減期は30年ですが、このように被ばくしない工夫をしたときの半減期は、次の式で計算します.

1/(半減期)=1/(30年)+1/(環境半減期)+1/(体内半減期)

ややこしいので、例を計算してみます.

ケース1 室内を拭かず、玄関も拭かず、生活も気にしないばあい
     (物理30年、環境15年、体内3年(継続取り込み))
     体の半減期    2.3年

ケース2 室内、玄関などを洗い、生活も注意する場合
     (物理30年、環境1年、体内30日)
     体の半減期    28日

素晴らしい!! なにもしなければ2年あまり体の中にいて放射線を出し続けるセシウムを1ヶ月で綺麗にすることができると言うことになります.

現実は、計算通りに行かないかも知れません。まだセシウムが少しですが降ってきます.でも、身の回りを綺麗にしておいて、食材に注意すると、かなり下がっていることも確かです.


「1/(半減期)=1/(30年)+1/(環境半減期)+1/(体内半減期)」という式は意味不明である。「1/実効半減期=1/物理学的半減期+1/生物学的半減期」という式ならばある。たとえば、ある放射性物質の物理学的半減期が長くても、生理的に体内から排出されるのであれば、実際の体に含まれる放射性物質の半減期(実効半減期)は短くなる。

しかしながら、「1/(半減期)=1/(30年)+1/(環境半減期)+1/(体内半減期)」とするのは誤りである。そもそも、式の左の(半減期)が何を意味するのか不明だ。ケース1、ケース2の計算をみると、おそらくは実効半減期のことであろうが、だとすると、環境半減期を計算式に入れるのは間違いである。たとえば、きわめて特殊な除染作業でセシウムの環境半減期を1日にできたとする。その場合、武田の式では実効半減期も1日以下になる計算となる。そんなわけはない。武田氏は、式の意味を理解していないか、あるいは、計算式の意味を理解できない人を対象読者としているか、どちらかである。私は前者だと考える。