NATROMのブログ

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犯人の生体情報

NAN`s BAR経由。■世田谷の一家殺害、韓国人犯行説消える(読売新聞)より。


 この事件では、宮沢さん方に残されていた足跡から、犯人がはいていたのは韓国製テニスシューズ「スラセンジャー」で、サイズは28センチだったことがわかっている。このサイズの同製品は、国内では販売されていなかったことから、特捜本部は当初、韓国人による犯行の可能性も視野に入れて捜査を進めてきた。
 しかしその後、現場に残された犯人の生体情報などの捜査資料をもとに、韓国警察当局と情報交換を進めた結果、特捜本部は最近になって、「韓国で生まれ育った人物の犯行ではない」ことを確認した。
「犯人の生体情報」って何だろう?DNAでは韓国人と日本人の区別をつけるのは不可能だし、まさか「体液中の唐辛子の濃度」ではなかろう。ちょいと調べてみたら、どうやら指紋のことらしい。世田谷の一家殺害事件では犯人の指紋が残っており、該当する指紋がないかどうか韓国警察当局に問い合わせたのであろう。初めて知ったが、韓国では、成人は指紋を全例登録されているとのこと。


■韓国の住民登録証・指紋押捺拒否運動の紹介


韓国では満17歳になると、すべての「国民」が国に両手のすべての指の「指紋」を登録して、この「住民登録証」を受け取ります。

読売新聞も、「生体情報」とかではなく、指紋なら指紋と書けばいいのに。北朝鮮からのスパイを判別できるようにという理由もあるのであろうが、全例指紋を登録というのも、日本の基準からすると凄いようにも思える。上記リンク先で紹介されているように、韓国では反対運動もなされている。反対する気持ちは理解できなくもないが、私だったら素直に登録してしまうだろう。自分は犯罪者になるつもりはないし、指紋登録によって犯罪が抑制されるというメリットのほうが大きいと考えるからだ。よしんば日本が全例指紋登録を行っていたら、世田谷の一家殺害はもう解決しているかもしれないのだ。

■犯罪者DNAデータベースでも論じたけれども、これは人権と犯罪抑制のトレードオフの問題だ。誰だって自分の指紋やDNAデータが登録されるのは気が進まないけれども、犯罪が抑制されるのであればかまわないと思う人だっているだろう。韓国の指紋登録制度がどれくらい犯罪の抑制に役に立っているのか、また、悪用されたことはなかったかどうか、知りたい。