NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

言っていないことを言ったかのようにされてしまうことについて

誤読等によって、相手が言ってもいないことを言ったかのように誤解することは誰にもあります。私にもあります。しかし、その頻度が異常に高い場合には、意図的に相手の主張を捻じ曲げているとか、相手の言っていることを正確に理解する能力に欠けているとか、何らかの問題の存在が示唆されます。どちらにせよ、言ってもいないことを言ったとしてしまうことが多い論者について、具体的な事例を記録しておくことは無駄ではないでしょう。


●臨床環境医の洗脳により医原性の電磁波過敏症が作られている


私は「臨床環境医の洗脳により医原性の電磁波過敏症が作られている」とは言っていない。洗脳だと主張している別の医師はいるが、洗脳は強い言葉であり、そのような言葉は私は避ける。私の主張は、もっと穏健な、「臨床環境医は、電磁波によって症状が生じるという患者の訴えを否定しなかったり、書籍において電磁波で症状が生じると記載したりした。その結果、電磁波による症状誘発という認識が患者に固定しやすくなる」というものである。



●宮田医師のCSに関する主張が「全て間違い」とするのなら


私は、宮田医師のCSに関する主張が「全て間違い」とは言っていない。たとえば、「CS患者は微量の化学物質に反応して症状が生じると訴えている」という主張は否定していない。本当に微量の化学物質に反応しているかどうかについては懐疑的であるが、患者がそう訴えていることは事実であると認めている。



●自分が45分の動画見なくて済む様に、お据え膳で「全文文字起こししたものを示すのが礼儀」ですと。


私は、「全文文字起こししたものを示すのが礼儀」とは言っていない。「礼儀として、40分間もある動画を見せようとする以前に、ご自分で該当部分を文字起こしをするなりすべきでしょう」とは言った。

議論をしようかというときに、相手に40分間も60分間もある動画を見ろ、というのはきわめて非常識である。この場合、またも会氏は、該当部分である書簡を文字起こしするなり、それが面倒なら動画の該当部分をスクリーンショットするなりして示すべきであった。

加えて、「該当部分を文字起こしをするなりすべき」という私の主張を「全文文字起こししたものを示すのが礼儀」と解釈したまたも会氏の読解能力に疑念が湧く。ニセ科学を信じてしまう人の特徴の一つに、量的な考察が苦手というものがあると私は考えているが、その特徴にあてはまっている。私が、宮田医師のCSに関する主張が「全て間違い」と言ったことになっているのも同様である。一度や二度ならともかく、またも会氏との会話において、短期間の間に何度も同じような「言ってもいないようなことを言ったかのようにされてしまう」問題が生じている。建設的な議論を行うのは困難である。

そもそも、またも会氏との会話の始まりは、「『MCSは治る疾患なのに治療を放棄するのか』とまで決めつけて、一般人が健康被害者に対し[タリージェといったMCSに有効だと主張されている薬剤の]使用を強いるのを良しとされますか?」という、またも会氏からの問いかけであった。私の観測範囲内では、使用を強いるような論者はおらず、せいぜい、「試さない人がいるのは何でだろう?」「治療の選択肢が増えたのは歓迎されてもいいのでは?」と疑問を呈する人ぐらいであった。