突然ですがここでクイズです。バイオラバーは山本化学工業株式会社が開発した特殊なラバーで、「人体が持つ波長にもっとも近いバイオウェーブを出し、その共振効果によって、健康づくりや医療分野などで活躍」しているそうです。以下に引用する臨床実験で、「バイオラバーが糖尿病に効果があると実証された」と主張されています。Q.:この実験でバイオラバーの効果が実証されたと言えますか?理由をつけて答えてください。
■「バイオラバー」応援サイト*1の■バイオラバーの効果*2より引用
インスリン非依存型の糖尿病に効果糖尿病には2つのタイプがあり、バイオラバーは、このうちの2型、つまりインスリン非依存型に効果があることが、臨床実験で実証されています。
バイオラバーを膵臓のある位置にあてて軽くマッサージを続けると、血糖値が下がりはじめます。
個人差はありますが、多くの症状改善例が報告されています。
バイオラバーを使った血糖値の変化
テスト方法
食後3時間後に病院内にて医師により第一回目の血糖値測定を行った。その後、医院でバイオラバーを15〜25分使用。その後、第二回目の血糖値をチェックした。バイオラバーの使用方法
膵臓の位置にバイオラバーを置き、バイオラバーの上をてで軽くこすった。(12〜25分)結果
バイオラバー測定前よりも28〜70も血糖値が下がった。これにより、これまで糖尿病は、治療が難しいとされていたものが、治療できる大きな可能性が出来たと考えられる。
(大塚医院 大塚滋先生データより)
答えは下のほうで。
最近、スピード社の競泳用の水着「レーザーレーサー」が話題になったが、これに対抗するために国内の水着メーカーに山本化学工業が素材を提供したそうである*3。そのためか、過去に私が書いた■バイオラバーってインチキ?というエントリーに、いくぶんアクセスが増え、コメントもついた。これを機会に、もう一度バイオラバーを取り上げてみた。
「体が持つ波長にもっとも近いバイオウェーブ」「オムニセンスによる波動測定」なんて言葉だけでインチキと断定してかまわないのだけど、ニセ科学を学ぶための教材としては手頃だろう。おそらく、上記した実験結果を見て、「やっぱり効果があるんだ」と思ってしまう人もかなりいるのだろうと思われる。だからこそ、宣伝になる。似たようなインチキは、特に健康食品関係の宣伝でよく見られる。個別のニセ科学商品を各個撃破するよりも、科学の基本的な考え方(この場合は「適切な対照群をとるべし」という点)を理解してもらうほうが望ましい。「バイオラバー」応援サイトには、「バイオラバーを使った血糖値の変化」以外にも手頃な「教材」がある。大学1年生にこれらの問題をさせたら、どれくらい正答できるだろう?
それほど多くはないと願いたいが、現役の医師でも間違えるやつはいるだろう。「大塚医院 大塚滋先生」のプロフィールは不明だが*4、もしかしたら分かっててやっている可能性がある。「とにかく、なんだか効くように見えるデータを出せ」と言われたら、私でもそうする。食後2時間か3時間後に一回目の血糖測定をすれば、通常はあとは下がっていく一方だ。まあ、分かっててやっているのならインチキの片棒を担ぐ詐欺師だし、分かっていなかったらただの馬鹿だが。それでは答え。
A.:この実験では、バイオラバーにインスリン非依存型糖尿病に対する効果があると実証されたとは言えない。通常、血糖値は食後30分後から60分後をピークとして、あとは自然に低下する。バイオラバー使用後の血糖値の低下は、バイオラバーの効果を見ているのではなく、自然な血糖値の推移を見ているだけの可能性がある。
次のステップは、バイオラバーに血糖値を低下させる効果があるかどうかを調べるための実験をデザインせよという問題だな。