NATROMのブログ

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総死亡も減らす癌検診の例

がん検診では総死亡は統計的有意には下がらない(検出力の問題で)と思っていたけど、例外もあるようだ。無作為化試験でエビデンスレベルは高い。

■Reduced Lung-Cancer Mortality with Low-Dose Computed Tomographic Screening ― NEJM

NEJM。肺癌ハイリスク者(喫煙者および過去喫煙者)53454人を、低線量CT群26722人、単純レントゲン群26732人に無作為に割り付け。肺癌発生率はCT群10万人年あたり 645 例(実数 1060 例)に対し、単純レントゲン群10万人年あたり572 例(実数 941 例)。

肺癌死亡は、CT群 10万人年あたり 247 例(実数 356 例)に対し、単純レントゲン群 10万人年あたり 309 例(実数 443 例)。ハイリスク者に対する低線量CTスクリーニングは20%肺癌死を減らす。

総死亡は、CT 群 1877 例に対し、単純レントゲン群 2000 例。有意差をもって6.7%の減少(95% C.I. 1.2 - 13.6)。総死亡中の24.1%が肺癌死。単純レントゲン群の過剰死亡の60.3%が肺癌による。肺癌を除けば、総死亡についてCT 群と単純レントゲン群との有意差はなくなる。


肺癌罹患がCT群に多いのはCTのほうが小さな癌まで見つけるためで、肺癌死亡がCT群で少ないのは普通に早期発見で治療がうまくいったからだろう。死因の24%が肺癌というハイリスク集団(日本人男性では6%ぐらい)だから、全死因で有意差が出たのだろう。肺癌を除いてもCT群で全死因が少ないので、おそらくは運の要素もあったものと思われる。