NATROMのブログ

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「打つと他の国から入国拒否されるワクチン」について

■子供の予防接種拒否について思うこと:Unwise decisions尊重の限界 - Noblesse Oblige 2nd by iGCNのブックマークにおけるyou21979 さんのコメント。


■はてなブックマーク - speculative and investment market hacking - 2015年8月29日


ワクチンはインフルかそうでないかで分けて考えたほうがいい。子供が受ける奴は打ったほうがいいけど打つと他の国から入国拒否されるワクチンもあるからひとまとめに考えないほうがいいよ。(入国拒否されるのはBCG)


概ね正しい。BCGを接種することでツベルクリン反応が陽性になり、結核感染が疑われ、国によっては胸部レントゲン撮影や予防内服を要求されることがある。

BCGは結核菌ワクチンである。接種すれば結核を100%を防げるというものではなく、効果は限定的であるが、小児の結核性髄膜炎等には有効性が高いとされる。結核の罹患率が比較的高い日本では定期接種されているが、他の先進諸国では定期接種になっていない国も多い。

ツベルクリン反応は結核感染の検査の一つである。結核菌由来の物質を皮下注射し、発赤や硬結などの皮膚の反応によって判断する。結核菌に感染した場合のみならず、BCGを接種してもツベルクリン反応は陽性になる。

BCGを定期接種していない国においては、ツベルクリン反応陽性すなわち結核菌感染とみなされてしまう。よって、実際には結核菌に感染しておらず、BCG接種歴があるだけなのに、検査や予防内服の対象になってしまうことがありうる。


■一般財団法人 海外邦人医療基金 海外赴任と予防接種


アメリカでは、BCG 接種を行わないので、入園・入学時にツベルクリン反応検査を行い、
その結果が陽性であれば、結核に感染していると判断し、胸部 X 線撮影を行い、治療(予防投薬)されることがあります。BCG 接種をしていれば、ツベルクリン反応は陽性になるので、BCG 接種を受けた旨を予防接種証明書に明記してもらってください。


おそらく、ツベルクリン反応が陽性であるというだけでは、入国が拒否されることはない。また、観光目的の入国ではいちいちツベルクリン反応は調べず、就労や就学のときに限るようである。とはいえ、海外渡航の際にBCG接種の証明や追加の検査を要求されることがあるというのは、デメリットの一つとは言えるだろう。

日本で定期接種の対象となっているワクチンの中では、BCGは必要性が比較的小さい。日本の結核の罹患率は低下傾向にあり、BCGの定期接種を継続すべきかどうかは議論があるところである。「ひとまとめに考えないほうがいい」というyou21979 さんの意見に賛成する。



参考:
■結核とBCGワクチンに関するQ&A|厚生労働省
■虐待じゃありませんぜ・・(BCGワクチン) - 感染症診療の原則
■【パブコメ3】 中止すべきワクチン - 感染症診療の原則
■アメリカにおけるツベルクリン反応の取り扱いについて Kobayashi Clinic - Dr. Shuichi Kobayashi