NATROMのブログ

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リレンザでも異常行動

現在、日本で使用可能なインフルエンザ治療薬は、タミフル、アマンタジン(商品名シンメトレル)、リレンザの3種類。うち、アマンタジンはインフルエンザB型には効果がなく、耐性が生じやすいので使いにくい。リレンザは剤形が吸入薬でありこれが利点でもあり欠点でもある。ある自称医師が「備蓄をするならタミフルと同時にリレンザも備蓄するべき。そうしないのはロックフェラーの陰謀だ」とか寝言を言っていたが、パンデミックの際に使用法の煩雑な吸入薬が役に立つかどうかを想像することもできないらしい*1

さて、タミフル服用後の異常行動が問題になり、リレンザの処方が増えるとリレンザ使用後の異常行動が報告されるようになるだろうと予想されていた。もしかしたら来シーズンになるかもしれないと思ったけど、今シーズン中に報道があった。


■タミフル以外でも異常行動 リレンザなどで計16人*2(中国新聞ニュース)


 厚生労働省は十四日、タミフル以外のインフルエンザ治療薬である「リレンザ」と「アマンタジン」でも、計十六人について服用後に異常行動が報告されていたことを明らかにした。うち十三人は未成年。
 内訳はリレンザが二○○○年の販売開始から今年四月二十七日までに十人。アマンタジンは効能にインフルエンザ治療が追加された一九九八年以降で六人(うち一人はタミフルを併用)。


もちろんそれぞれの薬剤と異常行動に因果関係がないとは言えない。しかしながら、インフルエンザは疾患単独で異常行動を起こしうるがゆえに、薬剤の使用とは無関係に異常行動は起こる。これまでタミフル服用後の異常行動の報告が多かったのは、タミフルが異常行動を起こす危険な薬だからではなく、多く処方されていたからに過ぎないからかもしれない。

それにしても、タミフルのときの狂ったような報道と比較して、リレンザ使用後の異常行動についての報道が少ないような気がする。グラクソ・スミスクライン(リレンザの会社)の陰謀か?「日本でタミフルの使用量が多いのはロックフェラーの陰謀」とか言っていたトンデモ系の方々はどうお考えなのだろう。実際のところは、単にマスコミが飽きちゃっただけなのであろうが。


*1:リレンザは少量だが備蓄されている。

*2:URL:http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200705150138.html