NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

日直は月に一回まで

日直というのは、土曜祝祭日の昼間に急患その他の対応をする当番であるのだが、年末の休みの関係もあって、12月の私の日直は、2日当たっていたのである。それはまあいいとして、今日、医局の秘書さんがやって来て言うには、


「労働基準法によって、日直は月に一回までと決まっているので、誰か他の先生と交代するなりして調整して欲しい」


とのこと。うわあ、労働基準法で守られているなんて知らなかったよ。ちょいと調べてみたら、■医療当直の労基署通達というページがあった。以下、引用はこのページから。


許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週一回、日直勤務については月一回を限度とすること。

確かに、日直勤務については月一回を限度とあるねえ。多分、当直日誌その他をお役人様がチェックして、「この医師は月に二回も日直をしている。労働基準法に違反しているから改善するように」などとケチをつけるのであろう。ありがたくて涙が出る。こういうくだらん仕事をしてお金をもらうほうになりたい。月二回日直が駄目なら、これはどうなんだ。「一般の宿日直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要」として、


常態として、ほとんど労働のする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。

とある。労働基準法がどうとか言うのであれば、お役人様はこういう点こそチェックすべきだろう。当直日誌を見ただけで、「ほとんど労働のする必要のない勤務」ではないことはわかるだろうに。他に、


夜間に充分睡眠がとりうること

医療機関において宿日直勤務を行う場合には、「夜間に充分睡眠がとりうる」という労働実態になければならないんだそうだ。ムッキー。


宿直中に、突発的な事故による応急患者の診療又は入院、急患の死亡、出産等があり、或は医師が看護師等に予め命じた処置を行わしめる等昼間と同様態の労働に従事することが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分にとりうるものである限り宿直の許可を取り消すことなく、その時間について法第三十三条又は第三十六条第一項による時間外労働の手続きをとらしめ、法第三十七条の割増賃金を支払わしめる取扱いをすること。

宿直中に急患が来て働いたら、宿直手当の他に、時間外手当がもらえるように読めるんだけど、その理解でいいのかな?そんなんもらったことないよ。医療従事者でこのブログを読んでいる人もいるだろうけど、もらったことある?

こんな内容スカスカ、実態に合っていない通達があったんだ。邪推するに、後々医師の労働条件が問題になった場合に、「厚生労働省としては、ちゃあんと通達を出していた。その通達に従わなかった医療機関の責任である」って責任逃れのためではなかろうか。病院側がこんな通達に従えないのは理解できる。だって、物理的に無理だもの。ぶつくさ文句は言うけど働くさ。しょうがない。厚生労働省がスカスカ通達を出すのも、まだ分からんでもない。まさか公的に「医者は寝ずに働け」とは言えないだろう。

一番頭に来るのが、こんなスカスカ通達をたてにとって、日直勤務については月一回などとケチつける地方役人だ。どうせ実態に合っていないのだから、そんなもん見逃しておけ。杓子定規に通達に従うってのなら、他の部分にも従え。お前ら、ケチつけて威張りたいだけなんだろ。おかげでこっちは、医療秘書さんや日当直を組む医長を含めて、余計な仕事が増えるんだよ。クソ役人め。