NATROMのブログ

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出生率低下は利己的遺伝子によって説明できるか

ダーウィン進化論は、さまざまな生物の行動を理解する助けになるが、人間の行動をダーウィン進化論だけで説明できるとは限らない。というか、人間の行動すべてをダーウィン進化論だけで説明できるわけがない。学説にはそれぞれ適用範囲というものがある。人間の行動の中には、ダーウィン進化論で説明できるものもあれば、そうでないものもある。避妊や自殺や血縁者殺しや出生率低下は、ダーウィン的な説明をつけるのがきわめて難しい部類に入るだろう*1

■出生率低下(kutuzawaの日記)


ドーキンス によると 生物は利己的な遺伝子が住んでいる乗り物であり 遺伝子自身は自分たちの繁栄を願ってなるべく長く生きて自身を増やすことを願っている そのためには乗り物である体が古くなり役に立たなくなると利己的遺伝子は次に乗換えをするために子供の体にその遺伝子が乗り移るのである こうして遺伝子は次々と乗換えを繰り返して永久的に生きるのである
我々は単なる乗り物でということに気がつかないで 懸命に働き子孫を残そうとする
ところが遺伝子の命令に従わない乗り物ができてきた
なぜか 以下はこのことに関しての私見である
遺伝子は自分の存在を強固にするため なるべく強く賢い乗り物を選んできた しかしここに来て賢くなりすぎたのである 遺伝子だけの望みを聞いているより 乗り物それ自身を楽にさせて 楽しませてあげましょう それには結婚してもDINK(double income no kids)だ 若い時には結婚などせずに生活を楽しもう 中にはせっかくできた自分たちの新しい遺伝子を乗り物自身の邪魔だからと 排除する(子殺し)者まで現れた
乗り物の反乱である

ドーキンス流に言えば「乗り物の反乱」、もっと一般的な言い方をすれば、「個体の適応度を下げる行動」について、「ドーキンスはどのように説明するのでしょうか?」(ブライト)


私たち、つまり私たちの脳は、遺伝子に対して反逆できるほどには十分に、遺伝子から分離独立した存在なのである。すでに記したように、避妊手段をこうずる際、私たちはいつもささやかな仕方でその反逆を実行している。もっと大規模に反逆してはいけない理由は、なにもないのである。(「利己的な遺伝子」P523)

kutuzawaさんの見方はほとんど正しかった。出生率の低下や実子殺しの例を持ち出すまでもなく、我々は気軽に遺伝子に反逆しているのだ。

*1:無理やり説明つけようと思えばできないこともないが、それでは「竹内久美子」になってしまう。竹内久美子は、安易に人間の行動をダーウィン的に説明をつけてしまうがゆえに、進化生物学を理解している人々からはまともな学者とみなされていない。