NATROMのブログ

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コンドームテスト用セックスシミュレーションデバイス

Nature誌2008年5月15日号の"A side-splitting tale."という記事((Nature. 2008 May 15;453(7193):267., A side-splitting tale. Petherick A.))より。コンドームの破損というのは大体1%ぐらいの頻度で起こるそうである。むろん、製品は強度テストを行っているのだが、伸ばしたりや膨らませたりするだけの単純なテストでは、実際の使用状況と異なるがゆえに限界がある。そこで、コンドームメーカーDurexのNicholas Whiteのチームが「コンドームをつけたセックスの現実により近いモデル」構築を試みた。そのデバイスは「'thrust-hole' diameter, thrust rate and lubrication(上品に訳すことができない)」を調節できる。まあ写真を見てもらったほうが早い。





コンドームテスト用デバイス*1


まず、ユーザーから送り返された破損したコンドームを詳細に調べ、60%以上のコンドームが製造段階ではキズがないはずの場所に破損が起こることを突き止めた。で、上記のデバイスを使用して、コンドームの「さや」の一部分が、十分に緩んだ状態に戻ることなく繰り返して伸展されることによって、コンドームの破損が起こることを突き止めた。つまり、コンドームの「腹の皮がよじれる"side-splitting"」ことによって破損するというわけ。

破損のメカニズムがわかれば、より安全なコンドームの開発に、ひいては性感染症の予防につながる。Nature誌に載るだけの価値を持つ研究なのだ。

*1:Contraception, Volume 77, Issue 5, May 2008, Pages 360-365, Male condoms that break in use do so mostly by a “blunt puncture” mechanism, Nicholas D. Whitea, David M. Hilla and Steffen Bodemeierbより引用。"Contraception"という雑誌があるのだねえ。