NATROMのブログ

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お手軽レシピの謎

諸君らはホワイトソース(ベシャメルソース)の作り方をご存知か。概ね以下のようなものである(朝日新聞 2006年11月25日朝刊より引用)。


基本のルーは、バターを極弱火にかけ、同量の小麦粉を、木べらで練るように合わせるだけ。注意点は焦がさないようにすることだけです。
このルーを牛乳でのばしたものがベシャメルソースです。まず、バターや小麦粉の10倍量の牛乳を、先ほどのルーに何度かに分けて加えていきます。牛乳は温かい方がよく混ざりますが、それでも最初は塊になります。根気よく木べらで練り合わせて下さい。もちろん弱火です。

私は作ったことがないので知らないが、小麦粉がダマになったりして大変らしい。上記引用からも、「何度かに分けて」「根気よく」などという語句が見られる。しかし、最近、妻が「お手軽」なレシピを覚え、それがあまりにもお手軽であるため、わざわざ私に教えてくれた。似たようなレシピはネット上で多くみられるが、たとえば以下。


■お手軽レシピ(7) 失敗知らずの「ホワイトソース」


全ての材料をお鍋に入れて中火にかけ、泡立て器でくるくるかき混ぜ続けます。
お好みのかたさ加減になったら火を止めて、できあがり。

これだけ。おい、材料入れて混ぜるだけじゃねーか。根気よく木べらで練り合わせていたのは何だったのか。これで味が違うというのならともかく、違いは私には分からない。食べる人が食べれば味の違いが分かるのか。それにしても、手間に対してあまりにもリターンが少ないのではないか。最初にホワイトソースを作った人は何のために根気よく練り合わせたのか。

それにしても、お手軽レシピを発見した人は偉大である。「いちいち練り合わせなくてもいいんじゃないのか」という疑問を持ち、「全部の材料を入れてみてはどうか」という仮説を元に実験し、仮説を証明したのだ。こういう人が技術を進歩させるのである。