NATROMのブログ

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鼻行類 新しく発見された哺乳類の構造と生活


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■鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 ハラルト シュテュンプケ (著), Harard Stumpke (原著), 日高 敏隆 (翻訳), 羽田 節子 (翻訳)

こないだからの馬鹿右翼理系保守関連で、山形浩生による竹内久美子批判(■竹内久美子:女のオヤジ)を紹介した。その中で、竹内が「シュテュムプケ流の高度なジョークとして楽しんでほしい」などと言ったのに山形が突っ込んでいる。それを読んだのか、実家の本棚から、妻が「鼻行類」を見つけて引っ張り出してきた。確か、私が大学生のときに買ったやつだ。日高敏隆をキーワードに本を片っ端から買っていた頃だ。

シュテュンプケ*1によるこの本は、鼻行類についての学術書だ。鼻行類とは、ハイアイアイ群島で1940年台に発見された哺乳類の新しい目(もく)である。目(もく)は結構大きなグループだ。他の哺乳類の目(もく)はたとえば、翼手目(コウモリ目)とか霊長目(サル目)とかである。

和名のハナアルキでわかるように、鼻行類は鼻が非常に発達しており、鼻を移動器官として利用している。ハイアイアイ群島では他の哺乳類がほとんどいないため、鼻行類は多様なニッチを占めるように進化している。オーストラリアでさまざまな有袋類がいるのと似ている。鼻行類には、コウモリほどではないにしろ、飛行能力を持っているものさえいるのだ(鼻ではなく耳が翼になってんだけど)。この本は図版が多いため、これらのバラエティに富んだ種の数々を眺めるだけでも結構楽しめる。

絶版になっているとばかり思っていたけど、平凡社ライブラリーで文庫化されていた。ただし、文庫版では補遺の『ジェットハナアルキにおける飛行の原理』が入っていないらしい。なにより、こういう本はハードカバーで持っていたいと思う。

*1:日本語訳では「シュテュムプケ」ではなく「シュテュンプケ」となっている。私はずっと、「シュテンプケ」だと思っていた。どうでもいい話だけど