NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

素数ゼミの秘密

■17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書 72) 吉村仁(著)。 素数ゼミとは、北アメリカ大陸において13年もしくは17年ごとに大発生するセミである。素数ゼミナールのことではない。なぜ周期が素数なのか?以前どこかで、寄生虫との…

ファインマンさんと永久機関

最近流行の「ウォーターエネルギーシステム」の話。なんでもジェネパックスという会社が「水から電流を取り出すことを可能にした」のだそうだ。GIGAZINEの■真偽判断に役立つ「ウォーターエネルギーシステム」に対する各報道陣からの質疑応答いろいろ、そして…

モルモット科学者

■自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝(レスリー・デンディ著, メル・ボーリング著, 梶山あゆみ訳)。原題は"Guinesa Pig Scientists"=モルモット科学者。タイトルで想像される通りの内容。自分の体を使って実験した科学者たちのエピソードが10章収録…

50年前の「生物と無生物の間」

ベストセラーの■生物と無生物のあいだ(福岡伸一 著)を読んでみた。前半は著者の留学体験を通して生物学の発展をわかりやすく解説し、後半は「生命とは動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)にある流れである」という生命観を論じている。著者の福岡…

行政学者から見た医療崩壊

■まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生 伊関 友伸 (著) 医療崩壊に関する本としては珍しく、非医療従事者によって書かれた。著者の伊関は2004年3月まで埼玉県に勤務する公務員であり、県立病院課および県立精神医療センターの職員として埼玉県立病院…

ゴキブリをも愛する虫屋

■わっ、ゴキブリだ! 盛口 満 (著) 妻はゴキブリが大嫌いなのに、なぜかこういう本を買う。ゴキブリを駆除する方法が載っている本ならまだわかるのだが、この本はナチュラリストによって書かれたもので、実用的なことは載っていない。著者の盛口満は、他にも…

中の人などいない!

■変な学術研究 1 (ハヤカワ文庫) エドゥアール・ロネ (著), 柴田 淑子 (訳) 妻が買ってきた。「ハトによるモネとピカソの絵画の鑑別」「1998年サッカー・ワールドカップ大会でフランスが優勝した日における、フランス人男性の心筋梗塞による死亡率の減少」…

神と科学は共存できるか?

宗教家と無神論者を4タイプに区別したこういうジョークがある。 ■信仰心と無神論の計算の違い(らばQ)。(原文:■Today's Math Lesson (The Primate Diaries)) ●原理主義宗教家 2+2=5だと信じている。その理由はそのように書かれているから。 税金…

勤務医の主張

■医療の限界 ■誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実 勤務医による、医療崩壊を論じた本。内容は概ね医療関係のブログで言われているようなことなので、普段からそうしたブログを読んでいる人はわざわざ買って読む必要はない。匿名でない情…

群衆の数を推定する

「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の参加者数が議論になっている。朝日新聞では「11万人」*1。産経新聞は「4万人強」*2。よく聞く話だよな。この手の話を書いた本がたしか本棚にあったはず。 ■統計はこうしてウソをつく ジョエル・ベスト(著), 林 大 (…

ファインマンさんの手紙

■ファインマンの手紙 リチャード・ファインマン(著), ミッシェル・ファインマン(編集), 渡会圭子(訳)高校生のころ、私はご冗談でしょう、ファインマンさんから多大な影響を受けた。物理学者。ノーベル賞受賞者。それ以上に、科学を愛することを教える教師で…

ビッグバン宇宙論

■ビッグバン宇宙論 (上) ■ビッグバン宇宙論 (下) サイモン・シン著、青木薫訳の組み合わせ。■フェルマーの最終定理、■暗号解読のいずれも面白く、読む価値があった。本書も2006年6月に日本語版が出てすぐに買ったが、積読になっていたのをいまごろ読了した。…

非対称の起源

■非対称の起源(ブルーバックス) C. マクマナス(著)、大貫昌子(訳)ネットで評判の本はアマゾンで買っちゃうが、店頭で手にとって本を買う習慣もまだある。なかなか読書の時間がとれなくて積んでるだけの本も多くあるのだが、「この機会を逃すと二度と読…

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

■医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か小松 秀樹 (著)ずいぶん前に読み終えたのだけど、紹介するタイミングを失ってそのままになっていた。日本の医療崩壊については、医療者の間では何をいまさらという感があるが、一般の人々の間ではまだ十分に認…

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学

■メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (新書)2007年4月初版。松永和紀著。カズノリではなくワキ。食卓の安全学―「食品報道」のウソを見破るなどの著作がある。プロフィールによれば毎日新聞社の記者として10年勤めた後に退職し、現在、フリーの科…

新型インフルエンザ

■新型インフルエンザ―世界がふるえる日(山本太郎 著) 2006年9月第一刷。最近、インフルエンザ絡みの話が話題になったこともあって読んでみた。比較的平易に書かれており読みやすく、内容も信頼できる。内容はタイトルの通り、新型インフルエンザについて。…

FSMの教典

■反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書(ボビー・ヘンダーソン 著, 片岡夏実 翻訳 )見つけたときは、「ああ、またトンデモ本か…」と思い、ネタにするために手にとってみたところ、なんか裏表紙に見覚えのある「モンスター」の絵が。サブ…

祖先の物語

ふー、やっと読み終えた。ドーキンスの新刊。 上下巻で900ページ超。読み応えありまくり。しかも高い。素人にはお勧めできない。内容は、タイトルにもあるように、ヒトの(そして他のあらゆる生物の)祖先の話。だったら、これまでも似たような語はある。た…

冥王星の発見物語

冥王星が新しい定義では惑星ではなくなるというニュースが最近あった。「冥王星はパーシヴァル・ローウェルの弟子のトンボーが苦労して見つけた」というのが私の冥王星に関する知識。私の非専門分野の自然科学の知識は、多くはアシモフの科学エッセイに由来…

昆虫食がゲテモノ扱いされるのはなぜだろう?

前回のエントリーではカブトムシを捕まえたというほのぼのとした話題を扱ったのに、コメント欄ではいつの間にか虫を食べる話題になってしまっていた。ずいぶん以前に読んだ、■昆虫食はいかが? (ヴィンセント・M. ホールト著)を思い出した。「19世紀末に書…

パラサイト式血液型診断〜藤田紘一郎がトンデモさんリスト入り?

■パラサイト式血液型診断 藤田紘一郎著「血液型による性格判断にはちゃんと科学的根拠がある。偉い教授がそう書いている」と言っている人がいたので、「どこの教授だよ?竹内久美子じゃないだろうな」と突っ込んだら、東京医科歯科大学名誉教授である藤田紘…

利己的な遺伝子

■利己的な遺伝子 リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆 (訳)30周年ということで、序文やらなんやら諸々ついて新装版が発売された。愛蔵版とかいって昔の漫画を再出版するのと同じ手法であるな。マニアでないなら第二版を持っている人は買う必要まったくな…

生物=生存機械論

大学生の頃は、勉強さえしていれば他の時間は何でも好きな事をして過ごせるという、まことに幸せな時代であった。時間はいくらでもあったので、かたっぱしから本を読んでいた。その本に出会ったときのことは今でも覚えている。読むべき本はないかと古本屋の…

彼、けものども、鳥ども、魚どもと語りき

■ソロモンの指環―動物行動学入門 コンラート ローレンツ (著), 日高 敏隆 (訳) 旧約聖書の述べるところにしたがえば、ソロモン王はけものや鳥や魚や地を這うものどもと語ったという。そんなことは私にだってできる。ただこの古代の王様のように、ありとあら…

数学パズル

■パズルでめぐる奇妙な数学ワールド イアン・スチュアート (著)、伊藤文英 (訳)数学パズルの本って、たいがいはどっかで見たようなパズルの寄せ集めだったりするのだけど、この本は違う。どの章もオリジナリティにあふれている。見たことがあると思っても、…

貝のミラクル

■貝のミラクル―軟体動物の最新学 奥谷喬司 編著貝類は、無脊椎動物としては身近であるにも関わらず、あまり一般書を読んだことがなかった。親父の本棚にあったのを拝借して読んでみたけど、結構面白い。18章にわけて、それぞれ貝類学の専門家が書いている。…

マラケシュの贋化石

■マラケシュの贋化石 スティーヴン・ジェイ グールド (著), 渡辺 政隆 (訳)グールドの新刊。といっても去年の11月出版だけど。いつもどおりのスタイルのエッセイ集。話がくどくて読むのに時間がかかるが、それもグールドの味。「マラケシュ」とはモロッコの…

ワトソンの書いたDNAの本

■DNA J.D.ワトソン (著), 青木薫(翻訳)ワトソンとはもちろん、DNAの二重らせん構造を発見したジェームス・ワトソンのこと。しかも、青木薫の訳であったので無条件で買っておいたのを、やっと今頃読了した。原著は2003年。献辞は「フランシス・クリックに」と…

ネットワーク科学とmixi

■複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳)アメリカの心理学者のミルグラムが行った、手紙を仲介してもらう実験は、どこかで聞いたことがあると思う。 …ミルグラムは、カンザス州とネブラスカ州の住民か…

性比の科学

■雄と雌の数をめぐる不思議 中公文庫 長谷川眞理子(著)例の理系保守とのやり取りで必要になって引っ張り出して、久しぶりに読んでみた。山形浩生は、長谷川眞理子を「生真面目で正確で好感は持てるものの、優等生的で面白みに欠ける説明」と評していた*1けど…