NATROMのブログ

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前の本より読みやすい!『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』


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■各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと(メタモル出版)

もうすでにご存知の読者もいらっしゃると思いますが、『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』という本が出ました。タイトルの通り、複数の分野の専門家が、主に子育てを行っている世代の大人を対象に書きました。私も「ホメオパシーをすすめられました」「フッ素って危ないの?」という章を担当しました。

ホメオパシーについてはこのブログの読者はお馴染みでしょう。フッ素については、齲歯(虫歯)予防のフッ化物利用について書きました。特別なことは書いていません。コクランレビューや質の高いメタアナリシスに基づいています。

発売されて1ヵ月ちょっと経ちました。■Amazonのカスタマーレビューは、最初は好意的なものばかりでしたが、最近は否定的なレビューもあります。ほとんどが、星5つか星1つに分かれるというのも興味深いところです。『「ニセ医学」に騙されないために』も似たようなパターンをとりました。一定数のアンチが生じるのは仕方がないことかもしれません。

他の著者の方々も、このブログの読者にとって馴染みが深いでしょう。宋美玄さん(自然分娩、母乳育児)、森戸やすみさん(経皮毒、薬一般)、成田崇信さん(マクロビ、トランス脂肪酸)、畝山智香子さん(残留農薬、食品添加物)、菊池誠さん(「水からの伝言」、放射能、EM菌)。

『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』の内容は、医学やニセ科学の分野に限りません。教育については、知らなかったようなことが書かれていて、たいへん勉強になりました。

「誕生学」については、私も耳にしたことはありますが、あまり詳しくありませんでした。自殺予防教育の一貫として一部の学校で採用されていますが、専門家によると「誕生学」のような「命の大切さ」を伝える自殺予防教育は良くない方法なのだそうです。「誕生学」の章は国立精神・神経医療研究センターの精神科医・松本俊彦さんが書いています。清原和博氏(元プロ野球選手)が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されたときに、薬物依存症の専門家としてコメントしておられました(■薬物問題、いま必要な議論とは / 松本俊彦×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-など)。

「2分の1成人式」は、10歳になる小学4年生のための学校行事です。そう言えば私の子どもも「2分の1成人式」を行いましたが、問題点については気づいていませんでした。子どもの家庭背景は多様です。離婚や虐待のない家庭のみを前提にしたような学校行事は問題です。「2分の1成人式」の章は名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授・内田良さんによります。小中学校で行われる組体操、特に競うように高くなっていったピラミッドの危険性を指摘していたことでご存知の読者もいらっしゃるでしょう(■組体操、この先に必要な議論とは / 内田良×木村草太×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-など)。

『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』は、子育て世代を対象に書かれていますが、子どもがいなかったり、すでに大きくなってりしている人が読んでも面白いと思います。私の母に読ませてみたところ、「前の本*1より読みやすい」と好評でした。


*1:『「ニセ医学」に騙されないために』