NATROMのブログ

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ホメオパシージャパンのクレジットカード決済中止について

ホメオパシージャパン株式会社のウェブサイト*1によると、クレジットカード決済が中止になったとのこと。ホメオパシージャパンの主張によれば、加盟店解除の理由は以下の通りである*2



 2011年9月8日、株式会社JCBより突然、加盟店契約解除の連絡を受け、12月16日より直営店店頭にてJCBカードにてお支払いいただけなくなりました。
 突然の加盟店解除の理由につきまして株式会社JCBに問い合わせましたところ、弊社商品が消費者の皆様にご迷惑をおかけした、事故が起きたからということではなく、また、ホメオパシーをご存じないJCB会員に不安を与えたということもない、とのことであり、加盟店解除の理由として伝えられましたのは、「常識から考えて、ホメオパシーは効果がある健康食品とは思えない。むしろ消費者に心配を与える可能性を感じる。日本において社会的認知が無いことが問題と感じている。社会的認知があれば、ネット等に見られるようなホメオパシージャパンへの誹謗中傷は生じない。日本でも海外のようにホメオパシーに健康保険が適用されるほど社会的認知度が上がれば、その時にJCB加盟店への再加盟を検討する。ホメオパシー全体の話であり、ホメオパシージャパンに限る話ではない。海外も含め、解除可能な契約は全て解除する」というものでした。

ホメオパシージャパンによる伝聞が正確であると仮定して

上記引用したJCBからホメオパシージャパンに伝えられた「加盟店解除の理由」については、ホメオパシージャパンを通じた伝聞であるので必ずしも正確であるとは限らない。が、正確であると仮定すると、JCBの対応には若干の問題があるように私には思われた。

「常識から考えて、ホメオパシーは効果がある健康食品とは思えない」というのは、なるほど、その通りであろう。しかしながらネット通販の現状をみるに、「常識から考えて効果があるとは思えない」ものはクレジット決済可能な状態で多く売られている。「日本において社会的認知が無い」というのも同様である。もし「健康保険が適応されるほど」の社会的認知度を求めるのであれば、健康食品はすべてクレジット決済不可ということになる。そうでなくても、ホメオパシーよりも社会的認知の無い商品だっていくらでもあるだろう。

ホメオパシーのみを決済中止する理由としては、強いて言えば、「ネット等に見られるようなホメオパシージャパンへの誹謗中傷」が挙げられている。しかし、誹謗中傷を理由にクレジットカード会社が決済を中止できる状況は、危ういのではないかと私は考える。たとえばの話、マイノリティを支援する商品を扱う会社が、ネット上の多数のマイノリティ差別者によって誹謗中傷された場合はどうなるのか?

クレジットカード会社も一企業であり、利益を追求する以上、面倒なことになりそうな会社との契約を避けようとするのは当然であろう。契約上も、カード会社の判断で契約を解除できるようになっているようである。しかし、通信販売においてカード決済は重要なインフラとなっている。カード会社には一定の社会的責任があるだろう。カード会社が恣意的な判断で契約を解除するのはあまり望ましくないと私には思われる。


ホメオパシージャパンによる伝聞が正確でない場合

以上、ホメオパシージャパンによる伝聞が正しいと仮定した上で、正当な理由なく恣意的にカード会社が加盟店との契約を解除できることへの危惧を述べた。しかしながら、末尾参考リンク先やそのブックマークコメントでも指摘されているように、JCBによる加盟店解除の理由は、「ホメオパシージャパン側の認識で作文されている点もうかがえる」。

ホメオパシージャパンによれば、JCBは「社会的認知があれば、ネット等に見られるようなホメオパシージャパンへの誹謗中傷は生じない」と伝えたとある。「中傷」とは「根拠のないことを言いふらして、他人の名誉を傷つけること」である*3。私の認識では、ネット等で見られるホメオパシージャパンへの批判の多くは十分な根拠があってのことであり、根拠のない「中傷」ではない。

JCBは「常識から考えて、ホメオパシーは効果がある健康食品とは思えない」とも伝えたとのことである。そういう常識を備えているにも関わらず、ホメオパシージャパンへの批判を根拠の無い「中傷」だとしているのは不自然である。JCB側の言い分を、ホメオパシージャパン側が正確に伝えていない可能性がある。

「中傷」ではなく、「正当な根拠をもった批判」が多数あるのであれば、カード会社が加盟店契約を解除する正当な理由になりうるのではないか。カード会社に一定の社会的責任があると考えると、むしろ問題のある会社との契約を避けるのは妥当な態度とも言えよう。