NATROMのブログ

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震災前後でがん保険料は変わったか?

「原発事故後のガンの発症率が上がったので、ガン保険の売り止めがかかってる」というツイートが流れてきた。既に100人以上にRTされている。





この話が仮に事実だとすると、会社内でも営業部長職以上でないと知りえないような情報を、ツイッターで8万人以上にフォローされている知人にホイホイ流す外資系保険会社の社員が存在するということになる。大丈夫か、保険会社。

私には外資系保険会社の知人がいないので、この話が事実かどうか検証できない。しかし、がん保険料が震災前後で変化したかどうかについてなら、公表されている資料を調べたらわかるかもしれないと思ってやってみた。別に網羅的に調べる気はないので、たまたま「がん保険 保険料」でググってみて上位にきたアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)のがん保険についてのみ述べる。現在、公式サイトでは「■生きるためのがん保険Days(デイズ)」という商品の保険料が確認できる。





震災前の保険料を調べる必要があるが、グーグル検索の検索オプションの「期間を指定」で、2011年3月11日以前の"生きるためのがん保険Days"を検索してみた。すると2011年1月31日付の■生きるためのがん保険Days(デイズ)>を発売というPDFファイルを発見した。以下に、保険料例を引用する。





確認した範囲内では、保険料は現在の公式サイトに掲載されているものと一致している。「原発事故後のガンの発症率が上がったので、ガン保険の売り止めがかかってる」というのが事実だとすれば、今後は販売を差し止めるか、保険料を値上げするのであろうか。「汚染地域として指定されてる」北海道〜関西圏の人たちは、今ががん保険の買い時かもしれないヨ。正直に言えば、秘密情報を漏らした外資系保険会社の社員の存在については私は懐疑的ではあるが、もし存在するならば、癌に対する危機感を煽り、がん保険の売り上げ増を謀ったという仮説を提唱したい。

がん保険の保険料は各社公開されているので、今後も継続的にウォッチするのは面白いかもしれない。「知人に聞いた」というデマと区別できない情報と異なり、客観的に検証可能である。