NATROMのブログ

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喘息死の年次推移のグラフを補完してみた

■喘息(ぜんそく)-気になる病気 e治験ドットコム-というサイトに載っている、喘息死の年次推移のグラフ。




喘息 -気になる病気 e治験ドットコム- *1より引用

最近10年間は、年間6千人で、ほぼ横ばいと書いてあるが、1997年までのデータしかない。これでは「最近10年」とは言えない*2。そこで、2008年までのデータを調べて*3、喘息死の年次推移のグラフを補完してみた。




日本の喘息死亡数の年次推移

元のグラフに合わせてY軸の原点をゼロではなく4000人にしたため、2001年から喘息死がマイナスになっているように見えるけど勘弁な。■喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー でも述べたが、喘息死が減ったのは吸入ステロイドを中心とした治療が推奨されたのが主因と考えられている。e治験ドットコムのサイトでは、吸入ステロイドが第一選択薬であることや近年の喘息治療の進歩についてきちんと述べてあり、グラフが古いことは大きな問題ではないと思う。喘息は死に得る病気であること、しかし、適切な治療によって死を防げることがわかればよい。しかし、できればグラフは更新して欲しい。還元水などを売る悪質な業者に引用元の明示なく引用されて、さも現代医学が喘息に対して無力であるかのように見せかけることに利用されないとも限らないから。最後に、Y軸の原点をゼロにしたグラフを載せる。




日本の喘息死亡数の年次推移


*1:URL:http://www.e-chiken.com/shikkan/zensoku.htm

*2:1995年に一時的に増えているのは、インフルエンザの流行か、死因統計分類のルールが変わったことによるものと思われる。

*3:中澤次夫、アレルギー疾患の疫学 喘息死の最近の傾向 死亡数の年次推移と薬剤との関連など、診断と治療 92巻8号 Page1311-1316、および厚生労働省のサイトより