NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

喘息に対するステロイド治療を否定するホメオパシー

科学的根拠の乏しい代替療法であっても、安価で安全でさえあれば、感冒などの自然治癒する病気や、逆に末期癌のような積極的な治療手段のない病気に(緩和ケアと併用しつつ)使用するのは、私は必ずしも否定しない。しかし、他の有効な治療法の妨げになるようであれば、許容できない。気管支喘息は、適切に治療しなければ死にうる病気である。気管支喘息について、標準的医療を否定し、根拠の乏しい代替療法を勧めるのは殺人に相当する行為である。由井寅子が学長を務めるThe Japan Royal Academy of Homoepathyのサイト*1より。



タイトル: 息苦しくなった時に喘息系の色々なレメディーを飲んでもなかなかヒットせずあまりの苦しさに気管支拡張剤を使ってしまう・・・というパターンが多いです。
記事No: 2404
投稿日: 2008/11/13(Thu) 01:15
投稿者: 女性・33・福岡県・一般
いつも体験談を興味深く拝見しております。
今年は気候が変だったせいか、喘息の発作が出ることが多くなりました。
特に夜に出るのですが、朝や昼間でも少し走っただけで息が苦しくなったりします。
(先月から、朝夜20分くらいかけて自転車通勤をしているのですがその時にも息苦しくなります)
最初はレメディーで対応してましたが、すぐ治まるのでだんだん気管支拡張剤を使う頻度が増えてしまいました。
また、お酒を飲んでも咳が出て息苦しくなります。(赤ワインや焼酎)
Dxシリーズのエグゾーストは何度かヒットしたことがあります。(一瞬、中国からの汚染物質が来てる??と思ってしまいましたが)
このような状態にはどんなレメディーが良いのでしょうか?
あと、息苦しくなった時に喘息系の色々なレメディーを飲んでもなかなかヒットせずあまりの苦しさに気管支拡張剤を使ってしまう・・・というパターンが多いです。
なかなかレメディーをヒットさせるのは難しいですね。


管理人
よくあるパターンとして、体毒の排泄としての皮膚発疹をステロイドなどで抑圧すると今度は肺の粘膜から排泄しようとして咳がでます。この排泄としての咳を気管支拡張剤などで止めるとどうなるかというと、肺には異物があり続けるので粘液がどんどん溜まり続けます。こうして、咳が出続ける喘息に移行します。それをまた気管支拡張剤で抑圧し続けると肺にびっしり粘液が張りついて窒息死してしまうわけです。こうして、強いステロイドの気管支拡張剤が使われるようになった1990年以降、喘息は死に至る可能性の高い危険な病気になってしまったというわけです(予防接種トンデモ論より)。
肺に体毒が溜まっているために咳が出ている場合は、咳は出ざるを得ないのではないかと思います(レメディーで止められないのではないかと思います)。ホメオパスに相談されることをおすすめします。苦しいときは、サポートHaiやサポートSekiなどとられるとよいでしょう。


質問した女性はすでに代替療法でどうにかできず、医師の診察を要する状態と思われる。代替療法を行っている施設でも、比較的まともなところでは、手に負えない状態であれば医師に受診するように勧めるものだ。ところが、The Japan Royal Academy of Homoepathyでは、「ホメオパスに相談されることをおすすめします」のだそうだ。さらに酷いことに、「気管支拡張剤で抑圧し続けると肺にびっしり粘液が張りついて窒息死する」「強いステロイドの気管支拡張剤が使われるようになった1990年以降、喘息は死に至る可能性の高い危険な病気になってしまった」と、標準的な治療を否定している。実際のところ、吸入ステロイド*2が使用される以前も喘息は死に得る危険な病気であった。日本の喘息死亡率のグラフ(総数および小児)*3を示す。





喘息死亡率(総数)の推移



小児の喘息死亡率の推移


1990年以降、喘息死は増えているどころか、減少していることがお分かりだろうか。喘息死の減少は、喘息治療のガイドラインで吸入ステロイドを中心とした治療が推奨されたのが主因と考えられている*4。世界的にも、吸入ステロイドは喘息に対して、まず第一に選択される薬である。ステロイドのせいで喘息死が増えたと考えるまともな科学者は存在しない。ホメオパシーの体験談を読むと、吸入ステロイドや気管支拡張剤を併用していても、「まずホメオパシーで治して、なるべく西洋薬は使わない」という方針の方もいらっしゃるが、これでも危ない。

情報を求めて、検索でやって来られた方へ。ホメオパシーを利用するものいいでしょう。しかし、気管支喘息は死ぬこともある病気だということを認識し、必ず医師の診察を受け、医師に必要だと判断されたら吸入ステロイドをきちんと使用してください。とくに、あなたの子どもが病気であるのならなおさらです。あなたが守ってあげないといけません。「ステロイドが喘息を殺人病に変えた」などという悪質なデマをとばす組織を信用するべきではありません。「どうしてもステロイドを使うのが嫌だ」と考える方もいらっしゃるかもしれません。そういう方にお願いがあります。ホメオパスが「ステロイドは良くない」とアドバイスをしたときに、言質をとってください。文書にして記録してください。万が一、あなたやあなたの大事な家族が、ステロイドを使わなかったせいで不幸な結果になったときの保険です。ホメオパスのアドバイスのせいで不利益を被った人は、恐れずに、ホメオパスの責任を問うてください。そうすることで、今後、不幸な人が増えるのを防ぐことができます。裁判になったとしても、呼吸器科の専門医をはじめとして、多くの医師が味方になってくれるでしょう。


*1:URL:http://rah-uk.com/case/wforum.cgi?mode=allread&no=2404

*2:そもそもステロイドは気管支拡張剤ではない

*3:■喘息死委員会(日本小児アレルギー学会)、および、松井猛彦、アレルギー診療の新しい展開 小児気管支喘息 喘息死の現状、小児科臨床59巻増刊 Page1355-1362(2006年)

*4:Suissa S et al, Low-dose inhaled corticosteroids and the prevention of death from asthma. NEJM 343: 332-336 (2000)あるいは Suissa S, Ernst P., Use of anti-inflammatory therapy and asthma mortality in Japan.,Eur Respir J. 21(1):101-4(2003)