NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

神様は多分存在しない。心配せず人生を楽しもう。


■英国の公共交通機関で「無神論」キャンペーン(エキサイトニュース/ロイター)


 英国の無神論者が今週、同国の公共交通機関で「神は存在せず」と通勤客らに呼び掛ける広告キャンペーンを立ち上げ、話題となっている。
 英国全土の都市で運行する800台のバスとロンドンの地下鉄の車内に貼られたポスターには、「おそらく神は存在しない。心配することを止めて人生を楽しもう」と書かれている。
 無神論推進派で作家でもあるリチャード・ドーキンス氏は、宗教に関心を持ち過ぎることが幻滅につながるということを示す手助けになればと、今回のキャンペーンを支援する理由を語った。


作家て。そりゃ本も書いているけどさ。せめて進化生物学者って言って。知らない人のために簡単に説明すると、ドーキンスは「利己的な遺伝子」という本を書いた科学者で、「進化論は科学的に間違っている」とか阿呆なことを言っているキリスト教原理主義者のみならず、「神は妄想である―宗教との決別」という本で宗教全般を批判した。とうぜん、議論が巻き起こり、「いやいやいや、それ言い過ぎ。穏健な宗教は科学と共存できるから」などと科学者からも反論された。こんな感じで、攻撃的な無神論者として有名な人だ。今回の「無神論」キャンペーンも、「何もそこまで」と思ってしまうが、なんでも、ロンドンのバスには、「神を拒む者は地獄で永遠に苦しむことになる」などという広告が掲載されており、それに対抗するためのものだとのこと*1

ドーキンスらのキャンペーンに対して、宗教界からの反応は、「神への興味を継続させるのでドーキンス教授に感謝する」「人々を人生の深い問いに関わせるのなら良いキャンペーンだ」という大人の対応*2から、広告基準協議会*3に苦情を訴えるものまで。どういう苦情かというと、「実証と真実性というルールに違反している」というもの*4。見事に釣られている。この苦情により無神論キャンペーンの広告が規制されることになったら、同時に、「神を拒む者は地獄で永遠に苦しむことになる」という広告も、真実性を実証しない限り規制されてしまうだろう。

ちなみに、「コメディアンで同キャンペーンの主催者でもあるアリアン・シェリン氏」はけっこう美人→■Ariane SherineでGoogleイメージ検索/■atheistcampaign.orgより*5。エキサイトニュースでドーキンスの写真しか載せていないことに苦情を訴える!


*1:■「神様は多分いない」と書かれたロンドンバス、来春にも登場か(AFPBB News)

*2:■'No God' slogans for city's buses(BBC NEWS)

*3:日本広告審査機構(JARO)のようなものだろう

*4:■'No God' campaign draws complaint(BBC NEWS) "But organisation Christian Voice has complained to the Advertising Standards Authority saying they break rules on substantiation and truthfulness."

*5:左のTシャツ着ているのがアリアン・シェリン、真ん中がドーキンス、右端で切れているおばちゃんはPolly Toynbeeというコラムニストらしい。カメラマンの興味の対象がありありとわかる写真ですな。魚拓