NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

「心に青雲」ステキ語録

「心に青雲」というブログの■ノーベル賞受賞者の哀れというエントリーが注目されている

ノーベル賞という話題のトピックに加え、「学問の世界の基準からすれば、こんなゴミみたいな研究で、世界的な発見だとは笑止である」とか、「しょせんノーベル賞なんか、ユダヤ陰謀組織の配下の者へのご褒美」とか、「南部氏その他、ノーベル賞をもらった人は感性の薄い顔をしている」とか、「素人ながら私でも、素粒子が非対称であるのは、言われるまでもなく当たり前ではないかと思う」とか、全編にわたってツッコミどころがあるからであろう。念のために言っておくが、これらの主張は、釣りでもネタでもなく、マジである。

以前から「心に青雲」をウォッチしていた私としては、「無名なころから応援していた野球選手がタイトルを獲得した」とか、「新人のころから注目していた漫画家がヒット作を書いた」とか、そんな気分。実はまったく無名だったというわけではなく、「コレクターの狂気」というエントリーで80ブクマぐらい集めた。



 芸術作品のコレクションならいいとしても、切手やコイン、フィギュア、蝶々、玩具、鉄道のグッズなどを集めるヤツは異常としかいいようがない。
 子供のうちならいいとしても、大の大人が…。
■コレクターの狂気 URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/8184b06aafe003b317a466f483a18ffd


コレクターは異常な性格で、社会性がなく、まともな人間ではないのですよ。まあそういう一面もあるかもしれませんね。それはそれとして、私が集めた「心に青雲」のステキ語録コレクションからいくつか紹介するよ。


学者先生どもは幼稚園の用務員低度


南郷継正先生の論理性の高みで勝負できる有識者など一人もいない。レベルが全然ちがう。南郷先生を一流大学の教授に譬えるなら、ほかの学者先生どもは幼稚園の用務員低度しかないのだ。
■なぜ南郷先生が超有名人ではない? URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/46e3c087ecd6279a9c2c69cec66b4ced

南郷継正先生とは、玄和会という空手道の流派の主催者である。「心に青雲」のブログ主さんは、空手道場を主宰しているそうであり、ブログにも南郷継正先生や最高幹部の教えがよく出てくる。南部・小林・益川の研究が「ゴミみたいな研究」であるそうなので、さぞや南郷継正先生はすごいのでしょう。


南郷継正先生の著作にはノーベル賞ものの世界的発見がぎっしり


南郷継正先生の著作を知らないから言えるのだ。著作をひもといてごらんなさい。それこそノーベル賞ものの世界的発見がぎっしり詰まっていて、腰を抜かすはずである。
■弁証法の学びは魂の問題 URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/23fdd86ac6edde3746a54df2876c76e7

南部らが受賞したノーベル賞は「ユダヤ陰謀組織の配下の者へのご褒美」なのだそうだが、それとは異なるノーベル賞があるのだろうか。「正直言って、私にも遺伝というものがよくわからない。わかったらノーベル賞ものではないか」という発言もあり、ノーベル賞に権威を認めているのだか認めていないのだかよくわからない。


マンモグラフィーは癌患者を増やすための陰謀


癌患者を増加させようと思ったら、癌で利益を得ている医者や製薬会社はまず、放射能を蔓延させる(人体に有害な放射線によって、がん患者が増える)。政府が推進しているマンモグラフィはその最たるもので、乳房にエックス線をあてて乳癌になっているかどうかを調べる。エックス線の検査を受ければ受けるほど乳癌になりやすくなるというワナだ。検査をひんぱんにやることによって放射線に対しての免疫が下がって乳癌になりやすくなる。
■癌利権集団の横暴(上) URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/a8d90ce409c7247f8e8183dd2f83214d

これはよくあるタイプの陰謀論。検診の有用性がコストに見合うものかという議論はありだが、ここまで突き抜けているといっそすがすがしい。ならばエコー検査ならよいかというとそうでもない。


エコーは電磁波であり、胎児に浴びせるのは良くない


例えば赤ちゃんをエコーでみるということをやるのだろうが、これは急激かつ劇的に細胞分裂して成長しつつある人間の胎児に大量の電磁波を浴びせるのである。病院では安全という建て前にはなっているが、良いわけがない。昔はあんなものやらずに健康な赤ちゃんが誕生した。それをカネ儲けのために産科が導入したのである。生まれてくる前に赤ちゃんの動くさまがぼんやりと見えてどうだというのか? そんなことは誕生時の楽しみししておけばいいじゃないか? 聴診器をあてれば、胎児が健康かどうか十分わかる。
■皮膚からの健康 URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/s/%C4%B6%B2%BB%C7%C8

「エコー(超音波)は実は電磁波である」「聴診器をあてれば、胎児が健康かどうか十分わかる」というノーベル賞ものの世界的発見がぎっしり。昔の周産期死亡率の高さを知らないのはデフォ。


煙草そのものは癌の原因ではなく交絡因子にすぎない


 癌は日本の平山雄氏が説いたように、食事が主たる原因で起きる。アジア型も欧米型もない。だから、禁煙は賛成であるが、たばこそのものは癌の原因ではない。たばこは食べ物ではないからだ。とくに肺癌はたばこが原因とされてきたが、それは間違いだ。
 たばこを吸うような人はだいたい食生活もいい加減になるから、その食事が悪くて癌になる。たばこが影響するとしても二次的であろう。
■癌利権集団の横暴(下) URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/339bbf784686f0c52060e7ac33e7a9aa

平山雄って、「癌は食事が主たる原因で起きる」って言ったの?そりゃまあ食事も癌の原因の一つだろうけど。もし食事が肺癌の主因であれば、非喫煙者の中で、食生活に問題のある群とない群を比較してみたら差がでるはずだけど、そんな事実はないよね。


エイズは本当に性的接触で感染するのだろうか


 あえて大胆なことを言うが、STD(性感染症)やらエイズやらは、本当に性的接触で感染するのだろうか? この疑問には2つある。
 一つは食事、睡眠、運動をまともにした生活過程を持ち、十分に健康体ならば感染症にはならないからだ。生活が悪くて、身体が潜在的に弱っていれば感染するのである。あるいは感染しても発病はない。これはエイズだろうがコレラだろうが、同じことで、感染を防ぐには、もちろん感染自体を防ぐ(消毒などで)手だても必要だが、感染に負けない丈夫で健康な身体を維持することなのだ。
■STDを考える会を批判する(下) URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/0eac235f171ec97af63ea94c98792aad

もちろん体が弱っていれば感染しやすいということはあろうが、STDが性的接触で感染するかどうかを疑問視するのはどうかしている。「十分に健康体ならば感染症にはならない」という自信があれば、ぜひとも、自分の体で感染実験をしてもらいたいものだ。性的接触で感染するのかどうかに懐疑的なもう一つの理由は、「やはりユダヤ・イルミナティの陰謀である」。「わが国への彼らの攻撃として、こうした性の破滅、赤ん坊の破滅を通じて、国力を殺ごうとしていると思われる」。ユダヤ陰謀論ってのは、いろんなトンデモと連鎖しているよね。


熱い溶鉱炉の中にも細菌やウイルスは存在する


そもそも無菌状態なんてあるわけがない。あるというなら弁証法の否定である。どんな酷寒だろうが、熱い溶鉱炉のなかだろうが、黴菌もウイルスもいる。どんなに手術前に消毒したって、いるものはいる。完璧な無菌室ができたとしても、それは物質ではなくなる。量質転化しないレベルにその数を減らすことはできても、だ。
■ユダヤ支配の闇と薬(4)インフルエンザ予防接種の闇 URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/6812a3d54abb70a1681a21d6047ba73f

この前後には、「過度な除菌は良くない」的なことが書かれているのだが、これで台無し。ワクチン否定はデフォ。基本に、専門家の過小評価(自分の知らないことは専門家も知らない)と、自己の経験の絶対化(自分はワクチンなしでインフルエンザにかからないからワクチンは不要だ)がある。


体外受精と粉ミルクで脳細胞の実体が牛と化す


体外受精では遺伝子が傷つけられ、粉ミルクでは牛の遺伝子が入ってしまう。だから3歳から小1くらいにいくら躾けようとしても、脳細胞の実体が牛と化しているのだから、人間としての躾けができなくなる。
■幼稚園で道徳教育とはあきれた所業 URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/7b648d9b381b917edde634b615b00e49

ブログ主の遺伝についての無理解については以前に、■母乳で伝わる遺伝子で述べた。


自転車に乗れるという情報がDNAに書き込まれる*1


自転車に乗れない人が乗れるようになる、というのは、そのように遺伝子が変わったのです。自転車に乗れる情報がDNAに書き込まれたのです。では親も自転車に乗れた、子供も乗れるようになった、という事態をみて、これは親の自転車に乗れる遺伝子が子に遺伝した、と言い得るのですか? 普通は言わないでしょう。子供は子供なりに習得して自分のDNAに自転車の乗り方という情報を組み込んだのです。病気もこの自転車と同じ論理のはずです。
■色覚異常は遺伝か否か URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/63d5a362adca9a0f3dd6f61a3a701e3d

「心に青雲」のブログ主は、遺伝子→表現型という流れを理解していない。親子で同じ病気があるのは、病気の遺伝子が遺伝したからではなく、悪い生活習慣が病気および遺伝子の変化を引き起こしたと考える。ブログ主が遺伝病の存在を疑問視する理由は、そもそも「病気の原因はすべて生活習慣にある」というドグマがあるからと思われる。「いかにも精神障害者と知的障害者の社会復帰は大事なことかもしれない。しかし、そうなったのは親の責任、本人の責任ではないか」という発言もしている。ブログ主自身は、少なくとも身体面では健康なのだろう。いくぶんかは良い生活習慣のおかげなのだろうが、そもそも健康に生れついたという幸運がある。その幸運を忘れて、病気の人に対して「生活習慣が悪かったからだ。自己責任だ」と言う訳だ。根底には病人に対する差別意識があるように思える。


冷たい空気が重いのは分子自体が重くなるから


それゆえ空気(の分子)が冷やされれば、その分子自体が変化する、あるいは運動じたいが変化すると考えるべきではないか。分子自体が重くなる(膨張)とか、軽く(収縮)なるとか。運ばれ方が早くなったり遅くなったり。そう考えれば、分子と分子の空間が広がるなんて苦しい説明をしなくてすむ。冷やされる(暖められる)という運動によって、分子が運ばれるという運動もするはずなのだ。川の流れとは、水の分子が運動して(流れて)いると直接に、分子は運ばれている(流されている)との二重構造がある。
■冷たい空気はなぜ重い? URL:http://blog.goo.ne.jp/hienkouhou/e/8845aec253cd4643ec54f962b7250f17

「素人ながら私でも、素粒子が非対称であるのは、言われるまでもなく当たり前ではないかと思う。(中略)。対称だと思っていた科学者のほうがどうかしていたのだ」と、素粒子物理学にも造詣が深いブログ主。対称性の破れどころじゃないですよ。いろんなトンデモを見てきたけど、オリジナリティといい、突き抜け具合といい、このエントリーは味わい深い一品である。

一応、トラックバックを送っておいたけど、承認されるはずがないな。


*1:「自転車に乗れるという獲得形質は遺伝する」より訂正。kotoさん(2008/10/13 14:09)ご指摘ありがとうございました