NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

病院と救急隊を調停するもの

■急患対応に調整役 たらい回し対策 地元医師ら配置(朝日新聞)


救急患者のたらい回しが起きた時には「調整官」に対応させます――政府は4月から、急患の搬送先の医療機関が見つからず手遅れになるのを防ぐため、搬送先を探して、受け入れを依頼するコーディネーターを全都道府県に置く事業を始める。救急隊の手間を省いて、搬送時間をできるだけ短くする狙いがある。
コーディネーターには、医療知識に加え、地元事情にも詳しいことが必要なため、地元の医師を充てたい考え。平日の夜間(午後4時ごろ〜翌日午前8時ごろ)と休日(土・日、祝日)をカバーできるようにする。


医師の絶対数を初めとして、受け入れ態勢が足りていないのだから、コーディネーターでは問題は解決しない。対策は、根本的には受け入れ能力を増やすこと、姑息的にはアクセス制限であり、振り分けを工夫することではない。コーディネーターでなく、「ネットワークで受け入れ可能な病院をリアルタイムで表示できるシステム」の類も同じこと。

だいたい、地元医師って、具体的に誰?手当てがいくら出るのか知らないが、こんなの引き受ける医師がいるんだろうか。まさか、疲弊した勤務医ってこたないよな。だったら開業医か?もちろん、開業医は病院とのネットワークを持つ。でもね、それは信頼関係があるからなんだよ。○○先生からの紹介なら多少は無理して受ける、なんてことはあるけど、それは○○先生が診察して当病院が適切だと判断したことを信頼しているからだ。救急隊からの又聞きで患者を紹介するなんて無責任なことをしたがる開業医がそういるとは思えない。下手したら信頼関係ぶち壊し。休日が潰れることや薄謝は許容できても、病院との信頼関係が壊れることは許容できないだろう。



費用は、1県あたり年約3000万円を見込んでおり、都道府県と国が折半して拠出する。このための厚生労働省の08年度予算案7億円が、すでに昨年末の復活折衝で認められている。


「医師バンク」もそうだけど、こういうのには予算がつくんだよね。「ちゃんと対策していますよ」アピールなんだろうか。