NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

自分の首を絞める喫煙者

先日、回らないほうの寿司屋に行った。完全禁煙であることを前もって確認していた。5〜6席程度のこじんまりとした店で、分煙は不可能であろう。先入観もあったのかもしれないが、たいへん満足できた。煙草を楽しみつつ寿司を食べたいという人もいるだろうから、そういう人は別の店を選択すればよい。分煙がきちんとなされているのであれば、たとえ害があろうとも、成人が煙草を吸うという選択をするのはかまわないと私は思う。問題は、マナーをわきまえない馬鹿がごく一部にいることだ。

路上喫煙禁止の場所が増えてきているが、思うに、ごく一部のマナーの悪い喫煙者のせいであろう。人ごみでも平気で歩き煙草を吸い、火のついた煙草を振り回し、吸殻はポイ捨てし、注意されたら「規則で決まっているのか」などと開き直る馬鹿が少数でもいたら、「ならば規則を作ろう」ということになる。非喫煙者にとっては路上喫煙禁止になろうと別に困らないが、普通の喫煙者にとっては、マナーの悪い喫煙者の巻き添えを食ったことになる。喫煙場所をこれ以上減らされないようにするには、マナーの向上をはかるしかないだろう。しかし、たとえば、以下のような事例を見るに、喫煙者の未来は暗いようだ。日本パイプクラブ連盟のサイトにある文章である。


■勘違い婆さん、爺さん(禁煙ファシズムにもの申す)


先日、こんなことがあった。


愚生は戸数100戸程度の中規模の集合住宅に住んでいるが、所用があり、外出するのに、いつものようにパイプを咥えて出かけた。1階玄関共用ロビーで、たまに見かける着飾った老婦人と出くわした。


その老婦人は、パイプを咥えて紫煙を出している愚生を見て、目を丸くして咎めるように「あの…、煙草は禁止ですけど」と言ってきた。


愚生は「禁止されていません。あなたはこの集合住宅の管理規約を読んで、ものを言っているのですか?」と問い返した。


管理規約には煙草を吸ってはいけないという規定は無いとのことである。しかしながら共用のスペースにおいて他人の迷惑を省みず煙草を自由に吸ってよいわけではないことを、常識的な喫煙者ならば理解できるであろう*1。禁止されてはいないことを一言断って、パイプを吸うのを止めれば別に波風は立たないのに、わざわざ喧嘩するのである。この老婦人を「婆さん」と、そして管理人を「爺さん」と呼び、管理人からの「他の居住者の迷惑になるので、ご協力お願いします」という要求を断るのだ。



愚生「協力しないと何度もはっきり言っているだろう。あんた、耳が悪くて聞こえないの? そもそも協力する必要性も意味も認めない。血迷ったことを言うのは止めてもらいたいね。あんたは管理人の業務を逸脱している。あの婆さんの勝手な我が儘を正義のように勘違いして、規則にない規定を勝手に作り出して、居住者に押しつけようとしている。そんな権限は、あんたには無い」(腹が立ってきたので、まくし立てる)


爺さん「葉巻は臭(にお)いがきついので、近所迷惑になります」(冷静に、冷静に)


愚生「葉巻じゃないよ。パイプ。パイプと葉巻はまったく違う。あんたもせいぜい長生きしているんだから、その程度は勉強しなさいよ。それと臭いじゃない。香りだよ。臭いがきついというなら、あの婆さんの香水は臭(くさ)いぜ。あの婆さんに臭い香水をまき散らすのは止めるよう、管理人のあんたから注意してくれ。もっとも香水を止めたら、体臭がきついかもしれんがな」(こちらも怒りをこらえるが、つい余計なことも口走る)


非喫煙者と共存しようという態度がまった見られない。ファシズムと闘う闘士のつもりなのだろうが、こういう行動がどのような結果を招くのか想像できないのであろう。管理規約に明記されていないことを盾にするマナーの悪い喫煙者の存在は、「共用スペースで喫煙するべからず」という規約が出来るきっかけになる。かくして、普通の喫煙者が迷惑を被るというわけ。

ちなみに、日本パイプクラブ連盟は、「日本を代表するパイプ喫煙愛好家団体の公式ホームページ」である。単に馬鹿が一人いるというだけでない。上記のようなことを公式ホームページに載せてもよいと判断した責任者がいるわけだ。「喫煙文化の正しい社会認識を高めるように努めている」そうだが、なるほど、日本の喫煙文化のレベルがよくわかる。


追記(2008年1月12日):コメント欄がいっぱいになったので、■喫煙とマナーに関する議論の続きというエントリーを作りました。


*1:はてブを見て追記。禁止されてないなら共用スペースでの喫煙はかまわないと私は思う。ダメなのは、他人の迷惑を省みず自由に吸っていいわけではないということ。タバコの煙が嫌いな人もいるのだから普通は配慮するでしょ?喫煙者が配慮しているのに更に攻撃してくるならファシズム呼ばわりもしていいだろう。禁煙ファシズムを批判したいのなら、明らかに嫌煙者に非がある例を出せばいいのに。