NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

インフルエンザ・ワクチンを受けたよ

動画サイトなどでキャラクターの異常な行動がタミフルと称されることがある*1。たとえ実際にタミフルと異常行動に因果関係があるとしても、かような表現は問題であるのだが、どっちにしろ規制は無理だ。あえて良かった探しをすると、「インフルエンザにかかったらかタミフルくれ」という患者が減り、公的保険の医療財政に貢献できるだろう。タミフルによって、インフルエンザによる有熱期間は1-2日短縮される。ほちぼち肺炎や入院や死亡を減らすというデータも出てきている*2。とは言え、基本的にはインフルエンザは安静のみで治る病気であり、ネットで熱心に動画を見るような若くて元気な層がタミフルを回避するのは良いことである。

諸外国ではタミフルはあまり使われておらず、日本が全世界の7割のタミフルを消費していると言われたこともある。これをもってラムズフェルドやらユダヤ資本やらの陰謀があるかのように言う人もいる。薬好きの国民性、タミフルは特効薬であるとの当初のマスコミ報道、誰でも気軽に医療機関に受診できる国民皆保険制度などのためだと私は思うが。外国にならうなら、ワクチンはどうか。アメリカの予防接種諮問委員会(US-ACIP)勧告(2007)によれば、インフルエンザワクチンの特別接種の対象は、重篤な合併症や医療機関を受診するリスクが高いもの、ハイリスク者との同居者もしくはハイリスク者をケアするものである*3

具体的に列挙していくと、6ヶ月〜4歳児、50歳以上のすべての者、妊婦、アスピリン内服中の6ヶ月〜18歳、呼吸器や循環器などの慢性疾患、免疫低下状態、誤嚥性肺炎を起こす恐れがある成人および小児、老人施設・療養施設の入所者、保健医療従事者、5歳児未満および50歳以上の成人との同居家族、ハイリスク者の同居家族およびケアする者、といった感じ。米国民の73%が該当するとのこと。接種が勧められる対象ではなく、「特に積極的に勧めなくてもよい」対象を挙げたほうが早そうだ。

興味深いのは、50歳以上のすべての者を対象にしている一方、学童は対象になっていない点(ただし、その他の対象として「一般人の接種希望者(児童生徒を含む)」となっている)。これはあくまでアメリカ人を対象にした勧告であるが、インフルエンザワクチン接種をお考えの方は参考に。今年は流行が早いという情報もあり、どうせワクチンを打つならお早めに。私は、本日済ませた。


*1:たとえば、たみ☆ふる巫女(YouTube):URL:http://www.youtube.com/watch?v=bYdyebQFeKY、タグ検索 タミフル(ニコニコ動画)URL:http://www.nicovideo.jp/tag/%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%95%E3%83%AB

*2:■タミフルの効果・・・肯定側も否定側も根拠を示して意見をいうべき (内科開業医のお勉強日記)

*3:メディカル朝日 2007年11月号 P57