NATROMのブログ

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シロアリの階級を決める遺伝子

シロアリのカーストを決める遺伝子が発見されたんだと。


■シロアリ:遺伝子が階級決定(毎日新聞)


 集団を形成して巣を作るシロアリには「働きアリ」や「女王アリ」など役割に応じた階級がある。こうした階級を決める遺伝子が存在することを茨城大などの国際研究チームが突き止めた。従来は、繁殖アリが出すフェロモンや栄養状態など、生育環境だけで階級が決まると考えられていた。9日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。
 研究チームは、日本で一般的なヤマトシロアリのうち、働きアリの「ワーカー」と、女王アリや王アリになる可能性を持つ「ニンフ」の2種類の階級のアリを調べた。
 ワーカーとニンフが特殊な脱皮をして繁殖力を持った「ワーカー繁殖虫」と「ニンフ繁殖虫」のオスとメスを交配。生まれた卵はすぐに親から引き離し、ワーカーだけに育てさせるなど、生育環境を同じにした。
 生まれ育った子どもの階級やその割合を分析した結果、性別をつかさどる性染色体のうちX染色体上に、子どもの階級を決める遺伝子が存在することが分かった。


なんかおかしくね?X染色体上に存在する「子どもの階級を決める遺伝子」って、つまり、ワーカーになりやすい対立遺伝子Wとニンフになりやすい対立遺伝子Nがあるってことだよね。遺伝子Nを持った個体はニンフになりやすく、よって女王アリや王アリになりやすいわけだ。するとあっという間に遺伝子Nは集団中に広がって、遺伝子Wは消えてしまわないかい?

■シロアリの階級(カスト)と生活史というページには「比較的下等な種ではシロアリの職蟻のうち老齢でないものはすべて他の階級への成長の可能性がある」そうで、もしかしたら、ワーカーによる繁殖もけっこうあるってことかな。だとしたら、むしろそちらのほうがびっくりだ。ワーカーじゃないやんそれ。アシナガバチの系統では、劣位の個体とワーカーの区別があいまいな種もある。なのでシロアリだって、「条件次第で」繁殖するワーカーもたまにいる、ぐらいならわからないでもない。遺伝子Wが集団内で維持できるほどワーカーによる繁殖ってあるのか。

まあ原著にあたれってことなんだろうけど。