NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

病院で受診する?

業界用語はその業界にどっぷりと浸かっているとあまりにも当たり前になりすぎて、それが業界用語であることを自覚できなくことがある。医療業界では、「頻回(ひんかい)」というのが、自覚されない業界用語の代表格であろう。「何度も」「たびたび」という意味である。ここを読んでいる医療従事者の諸君は、これが業界用語であるとご存知だったか?私は数年前まで普通の言葉だと思っていた。基本的に、患者さんへ説明するときに「頻回」という言葉を使うのはあまり望ましくないのである。Microsoft IMEでは変換してくれない。Googleで「頻回」で検索すると、医療関係者のサイトばかり。詳しくは、現時点でGoogleトップである■頻回(医学都市伝説)を参照されたし。


さて、復氷− とけた氷がまたこおる − そして吸盤…*1というブログで、「病院受診する」という言葉が業界用語みたいなものである可能性が指摘された。


■病院を「受診する」について(復氷)


「病院を受診する」という表現があることを今日まで知らなかった。
「受診する」という言い方自体、日常ではあまり使わないのではないかと思うが、強いてあげれば、

「内科で受診する」
のように「で」を使うものかと思っていたが、Google的には、「を受診する」の方が1桁多い。

"病院を受診する" を検索すると約36000件、"病院で受診する" を検索すると約900件と、かなりの差があるそうだ。ただし、「を」の方は、ほとんどが病院などの医療関係のページであるとのこと。私は医療業界の人間であるからなのか、「病院受診する」派である。「病院受診する」という言い方も間違いではないが、「病院で何科受診するんだよ?」と、なんとなくむずむずする。これが病院ではなく「内科で受診する」となると主観的には間違っている度が大きくなったと感じる。「××先生で受診する」は完全に間違いで、「××先生を受診する」もしくは「××先生に受診する」が正しいように私には思われる。「××先生で受診する」だと、私にとっては何だか「××先生のコネで予約待ちを飛び越して特別に優先的に別の偉い先生を受診する」ようなそんな感じ。しかしながら、ネット上では「××先生で受診する」という言い回しも確かに使われている。どちらでもかまわないのだろうか。

似たような話がmixiにもあって、「(患者が)『診察に行く』は日本語として間違いなのか」とかいうトピックが立っており、「診察に行くのは医師であって、患者は『受診する』だろ」「いや、診察(を受け)に行くと考えればOK」「受診に行くが普通です」「『受診に行く』っていう言い回しは『腹痛が痛い』みたいな違和感を感じる」「『診断に行く』とすら表現する一般人もいる」などなど、さまざまな意見が出ていた。

*1:ちなみに吸盤とはどこでも吸盤というおもしろグッズのこと