NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

利用者を侮辱するサポセンサイトの大ゴーマン


 「パソコンのことをよく知らない私たち利用者にとって、ネット上のサポートセンター勤務者からの投稿で構成されたサイトで、嘘や中傷、さらに素人からの質問をあざ笑うかのような書き込みが続くことは、堪えがたい苦痛。このようなことが許されて良いはずはありません」
 このサイトでは利用者に対して、<トレイも外せないような人間が、いきなりプリンターを分解するな!><こういう人にパソコンを使わせないで欲しい…。(切実)><カタチあるものはなぁ〜みんな壊れるんだよオッサン!><人の時間を何だと思ってんじゃい! コラ!><それぐらい基本でしょ!>といった信じられない中傷が含まれていたのだ。
 しかもわざわざ投稿者の名に“とりあえず殴りたい”“うんこちゃん”などというふざけた仮名をつけて利用者感情を逆撫でしたうえで、トップページにはWindowsのアイコンを模して、<'クレーム親父'を地球上から削除してもよろしいですか?><頑固でド素人で直情的な親父 お客様の言っている意味が理解できません。タイムアウトで処理が終了しました。><イヤな客にロックオンされました… この顧客の履歴を削除しますか?>と利用者がすべてクレーマーであるかのように煽ったのだ。
 自らもサイトを読んでいるユーザーが解説する。
 「これは『絶対サポセン黙示録』という、本も出版した人気サイトです。このサイトは主に、『サポートセンターという、ユーザーに対して開かれているようでいて実態を窺い知ることが難しい場所での出来事を、面白い読み物』として紹介しています。サポートセンター勤務者にとっては情報交換の恰好の場であり、パソコンに詳しいヘビーユーザーにとっても、素人の愚かな反応を面白く読める。そのためネット上でも評判が高いと聞きます」
 絶対サポセン黙示録の問題点をこう指摘する人もいる。
 「サポートセンター勤務者同士の有意義な議論の場所というならば、匿名ではなく実名で意見を述べ合うのが筋。そうして初めて研鑽の場になるわけで、無責任な批判や個人攻撃は何も生み出さないどころかサポセン不信の一因であるとも言えます」
 利用者を蔑ろにするサポートセンターに、今後我々は何を期待すればいいのか。


参考:■患者を侮辱する医者向けサイトの大ゴーマン 週刊文春(産科医療のこれから)。


サポセン黙示録では、非常識な利用者への対応を読み物として提供している。パソコンに不慣れで、ネタになっている行為がなぜ非常識なのかを理解できない人がサポセン黙示録を読んだら、きわめて不愉快になるであろう。にも関わらず、サポセン黙示録はゴーマンだなどと批判されることはあまりない。なぜか?サイトを見に行く人、わざわざ本を買う人は初めからある程度のコンピュータのスキルがあるからだ。サポセン黙示録も、最低限のコンピュータスキルがある読者を対象に書いている。「素人がいきなりプリンターを分解してはいけない」ことを知らない人は読者として前提にない。世間一般でも、(たとえば医療知識と比較して)コンピュータに関するスキルは知られているため、サポセン黙示録はゴーマンだなどと週刊誌で煽っても失笑されるだけだ。

サポセン黙示録で辛辣な毒を吐いている人も、ほとんどは実際の現場でそのような態度をとっているわけではないであろう。その場はプロとして対応し、あとで心情を共有できる場で発散させているに過ぎない。このような発散が一切許されないとしたら、仕事に支障をきたす。プロであっても人間である。どのような利用者に対してもネガティブな感情を持つなというのは不可能である。現場以外でネガティブな感情を言語化し、それを共有することで心の安定が保てるという効果が期待できる。だからと言って、無制限に嘘・中傷を書けるわけではない。同業者がたくさん見ている場で、デタラメなことを書いたらたちまちツッコミが入るからだ。

ネタになっている人に、「ここであなたのことが悪く言われている」とサポセン黙示録をわざわざ見せる人がいたとしたら、何を目的にしているのだろうか。