NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

ふしぎな たね

■ふしぎな たね 美しい数学 安野光雅 (著)

以前、津和野の安野光雅美術館へ行ったときに買った本。安野光雅の絵本、とくに数についての絵本は大好きだ。出版元の童話屋のホームページによれば、数学者の森毅が文を書いたらしい。「ふしぎな たね」は、こんな風に始まる。


むかし あるところに なまけものの 男が すんでいました。
冬の日のこと 男がぼんやりと 空をながめていると
せんにんが でてきて
「ふしぎな タネを あげよう。その タネを 1こ やいてたべれば
1年かんは もう なにも たべなくても おなかが すくことはない。
また この タネ 1こ 今 じめんにうめておくと、
らいねんの 秋には かならず みのって 2こに なる」
と いって ふしぎな タネを 2こ くれました。
うらやましいぞ、なまけものの男。私にも何かください。それはともかく、このなまけものは、1個を焼いて食べ、残りの1個を地面に埋めた。秋には2個とれる。そしてまた1個を焼いて食べ、残り1個を地面に埋めるというのを数年くらい繰り返す。で、やっと、タネを2つともまくということを思いつく。その後は、数列の話になる。毎年1個を焼いて食べるので、単純に2倍になっていくのではない。1年目には収穫した4個のタネのうち、1個を食べ、3個をまく。αn+1=2(αn-1)という数列になる。2年目には6個、3年目には10個のタネが収穫できる。

諸君らも承知の通り、こうした数列はどんどん数が増えていく。6年目に男は結婚し、以降、妻が食べる分のタネや、結婚式にきてくれた人へのおみやげやら、町に売りにいった分やら、倉庫にしまっておいた分やらで上記した式のパターンは崩れるが、それでも、短期間で数が増えていくことをわからせてくれる。もう、男はなまけものではいられなくなった。