NATROMのブログ

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B型肝炎ワクチンに数%もの重篤な副作用がある、ということにはならない

「これまで長らく使用されてきた実績のあるA型肝炎ワクチンやB型肝炎ワクチンに数%もの重篤な副作用がある、ということになりはしませんか」という問いかけに対し、未来さん(kirara2020Aさん)から「そういうことになるのではないですか?」というお返事をいただきました。


そういうことにはなりません。未来さんが根拠として挙げられているのは「接種している同僚にもアレルギー疾患や自己免疫疾患に罹患している方がやたら多い」ことですが、せいぜい「私の同僚には気が短い血液型がB型の人がやたら多い」程度の根拠です。

私の勤務先は病院ですので、血液に暴露する可能性のある新規の勤務者にはB型肝炎ワクチンを接種します。しかし、接種後にアレルギー疾患や自己免疫疾患を発症したなんて例は存じ上げません。まあこれは私の個人の経験に過ぎませんので、やはり根拠としては乏しいです。

しかし、病院は日本中に何千とあります。そのなかでB型肝炎ワクチンを接種している人は何万人にもなるでしょう。未来さんが同僚の中で疾患が増えていることを気づくほどにB型肝炎ワクチンが疾患の原因になるとしたら、この何千とある病院関係者の誰かがとっくに気づいているのではないですか。誰も気づいていないとしたら、



1. 何千とある病院関係者が気づくことのできないような変化に未来さんは気づいた。
2. 未来さんの同僚に罹患者が多いというのは、偶然か、もしくは、確証バイアスであって、ワクチンとは無関係である。



のいずれかだと思われます。どちらの可能性が高いと思いますか?

海外でもB型肝炎ワクチンは広く接種されています。しかしながら、アレルギー疾患や自己免疫疾患との関連は観察されていません。これが「数百万分の1の確率で疾患を増やす」とかなら「本当はワクチンによって疾患は増えているのだけれども背景に埋もれて気づかれないだけだ」という可能性もありますが、さすがに数%もの重篤な副作用が世界中で見逃されているなんてことはきわめて考えにくいのではないでしょうか。



1. 世界中の医学者は数%もの重篤な副作用を見落としているボンクラである。
2. 世界中の医学者は数%もの重篤な副作用に気づいているが、口裏を合わせてワクチンを打ち続けている。
3. B型肝炎ワクチンには数%もの重篤な副作用はない。



のいずれかだと思われます。どの可能性が高いと思いますか?