NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

はたともこ氏(民主党)の主張を紹介してみる

理想的な立候補者や政党はなかなか無いので、選挙では「比較的まし」な選択肢を選ばざるを得ない。どの政党にもある程度は困った人はいるだろうが、ある民主党公認候補者が主な理由で、前回の比例代表選挙では私は民主党には投票しなかった。その候補者が、今度、繰り上げ当選になるそうだ。


■時事ドットコム:民主・秦氏が繰り上げ当選へ


 西岡武夫参院議長が5日死去したことに伴い、2007年7月の参院選の民主党比例代表名簿に従って、秦知子氏が繰り上げ当選する。中央選挙管理会が近く決定する。


はたともこ(秦知子)氏は、薬剤師かつケアマネジャーと紹介されている。薬剤師であるから、理系方面、とくに医療関係で活躍を期待したいのだが、これから紹介するように、いろいろ不安がある。賛成するにせよ、反対するにせよ、繰り上げ当選して国会議員になる人物の主張を知っておくことは悪いことではなかろう。はたともこ氏のブログ、およびツイッターから、氏の主張をいくつか紹介する。

人体にとって牛乳は、むしろ「毒」

■酪農から有機農業への転換 5月28日 - ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ


北海道の牛乳が売れない。ホクレンは、ペットボトルのお茶や豆乳などの普及が、牛乳の販売量の低下に大きく影響していると分析しているが、新発売される他の飲料水の台頭が、牛乳の消費を低下させている大きな要因であるとの見解は、正しい分析だとは言い難い。「病気にならない生き方」の著者・新谷弘実医師が指摘しているように、牛乳は、そもそも人間のための飲物ではない。それを無理に人間の飲物とするために、粒上の乳脂肪を均一に攪拌する際、乳脂肪が過酸化脂質へと酸化し、人体にとって牛乳は、むしろ「毒」と化してしまっているという事実を、そろそろ私たちは正面から受け止めなければならない時に来ている。


牛乳は「ガンや高血圧・心臓病の原因になる」*1そうだ。もちろん、あらゆる食べ物と同じように、牛乳は飲みすぎたら体に悪い。アレルギーのある人もいるだろう。だが、私の知る限りでは、「牛乳は毒」と言えるだけの信頼できる疫学調査は存在しない。食生活と癌の関係についてはよく調べられているが、一般的には、塩分、野菜不足、アルコール、肥満、熱い飲食物、加工肉がリスクとされており、牛乳がリスク要因として挙がることはない*2

牛乳の有害性を示すにあたって、新谷弘実医師による一般向けの著作以外に、はたともこ氏は文献を提示していない。新谷弘実医師は、消化管内視鏡の分野では実績を残したが、牛乳有害論を含めた最近の主張についてはまともな医学者からは相手にされていない。新谷弘実医師は、牛乳乳製品健康科学会議より公開質問を受けている。回答および牛乳乳製品健康科学会議からの再回答については、■新谷弘実医師の回答書の内容等について牛乳乳製品健康科学会議の見解で読める。新谷弘実医師による回答は、回答になっていない。たとえば、公開質問8の『ヨーグルトの乳酸菌は胃で死んで効果がない』の科学的根拠についての質問に対し、新谷弘実医師は文献検索ホームページのURLのみを提示した。


産科医は勤務時間にあわせて人工的にお産の日時を調整している

■助産師の育成 4月18日 - ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ


2003年の全国出生数統計によると、土日の出産数が極端に少なく、時間別では午後1時〜2時が出産のピークだ。一方、出産に医療が介入しない助産院では、日の出に近い午前6時に出産のピークを迎える。病院での出産は医師の出勤時間帯に多く、助産院では午後11時から翌日のお昼頃までが多い。グラフにすると、病院と助産院とでは、明らかに正反対の結果が見てとれる。病院では、医師が勤務時間にあわせて人工的にお産の日時を調整しているのだ。


助産師が役割分担することで産科医の負担を減らそうという提言はよい。しかし、はたともこ氏は、病院の出産に否定的である。「医療機関での無機質なお産と異なり、助産師が活躍する出産は、人間味があふれ温かい」「人工的な病院での出産よりも、自然体で母子中心の助産院での出産のほうが、安定感があり元気な赤ちゃんに育ちやすい」とも書いてある。助産院での出産のほうが元気な赤ちゃんに育ちやすい根拠は述べられていない。また、病院の出産が多くなることで、周産期死亡率も妊産婦死亡率も激減したことには触れられていない。

「医師が勤務時間にあわせて人工的にお産の日時を調整している」ことは、赤ちゃんが死亡することより悪いことなのだろうか?産科医や病院の都合で出生時間がコントロールされているのではない。母体と新生児の安全のためである。助産院と違って、病院ではあらかじめリスクが高いことがわかっている出産がある。待機的な帝王切開術は、スタッフの充実している平日の昼に行われる。たしかに不自然だが、そもそも自然なお産とは一定の割合で新生児や母体が死ぬものなのだ。出生時間調整については、■産科医療のこれから: 日本の赤ちゃんたちは「人為的な操作と誘導で生まされている」のか?に詳しい。


添加物や農薬・化学肥料がガン激増の大きな要因だ

■新鮮野菜「トマトとオクラ」が教えてくれたこと 8月12日 - ひらがな5文字の「はたともこ」ブログ


添加物や農薬・化学肥料に侵された食品の横行が、現代人にガンを激増させる大きな要因であることは、いまや否定できない事実だ。可能な限り添加物や農薬・化学肥料に侵されていない食材を摂取しようとする消費者の行為に水をさす週刊ダイヤモンドの主張は、まさに利潤追求の企業の代弁者とみなされても仕方がないものだ。旬の新鮮とれたての食材は、週刊ダイヤモンドが擁護する「味の素」を使わなくても、それだけで美味しい。化学調味料の乱用は、素材の味を引き立てるどころか、私たちの健康を明らかに阻害する。


私の知る限りでは、現代日本の癌の主なリスクファクターは、喫煙、飲酒、肥満、運動不足、ウイルス感染、塩分過多、野菜不足などであって(■がん予防のためにできる6つの方法を参照のこと)、添加物、農薬、化学肥料が癌の主因であるとする信頼できる疫学調査は存在しない。「否定できない事実」と言うからには、はたともこ氏は、なんらかの根拠を提示するべきだった。そもそも、日本人に癌が「激増」しているのは、他の病気で死ななくなった結果である。年齢調整すれば、日本人の癌は増えておらず、むしろ最近では減少傾向にある(■どうして日本は癌大国になってしまったのか?を参照のこと)。

添加物や農薬・化学肥料が癌の原因であるという主張は、確かによく聞く。しかし、それは一般の人が持っているイメージであって、専門家の見解は異なる。「がんの原因について、主婦とがん疫学者の考え方の違い」というよく知られたグラフがある*3。主婦が食物添加物や農薬をがんの原因と考えているのに対し、がん疫学者はそうは考えていない。食物添加物や農薬を不安に思う主婦の気持ちを無視するべきではない。しかし、政治家は主婦の気持ちも十分汲んだ上で、専門家の見解に基づいて政策を立てるべきではないか。はたともこ氏は専門家の意見を知らないと私は推測する。添加物や農薬・化学肥料が癌の主因であるのが「否定できない事実」だと考えるような人物に政策を決められたくはない。


薬剤師、あるいは、国会議員として

他にも、はたともこ氏は、ワクチンやタミフルやイレッサに否定的である一方で、漢方薬やコエンザイムQ10に肯定的である。典型的というか、とてもわかりやすい立場ではある。それにしても、インフルエンザワクチンやタミフル並みのエビデンスが麻黄湯にはあるのだろうか?「牛乳はそもそも人間のための飲物ではない」というのなら、自然には到底摂取不可能な量のコエンザイムQ10だって人間のための食べ物ではないことにならないか?

国会議員とはいえ、すべての分野に精通するのは不可能であろう。しかし、個々の専門分野ではしっかりした知識を持っていて欲しい。薬剤師の肩書を持つ国会議員となる人物が、上記引用したような主張を行っていることに、私は強く危惧を感じる。正直なところを言えば、薬剤師であろうとなかろうと、上記引用したような主張を行うには慎重になるぐらいの常識は身につけておいて欲しいと思う。ただ、怖い考えになってしまうが、はたともこ氏は、(ツイッターでうっかり本音を漏らすぐらいで)ブログでは慎重であったのかもしれない。





モンサントGMOの真の目的は人口調節(民族抹殺)と言われている。一部ワクチンもしかり。TPP阻止は日本人の命と健康を守ることなのだ。


*1:URL:http://blog.goo.ne.jp/hatatomoko1966826/e/e11ab01fec899bcf45e10ee34f5c9403

*2:たとえばhttp://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause/dietarylife.html

*3:たとえば■農薬はどうやら発がん原因として重要視されていないらしい - 栄養学のメモと活用で見れる