NATROMのブログ

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(雑件)医師向けの雑誌に医学とまったく無関係な質疑応答が載る理由は?

日本医事新報という雑誌がある。お医者さん向けの雑誌だ。この雑誌の質疑応答というコーナーが、ときに面白い。医師向けの雑誌であるからして、質疑応答の多くは医学に関するものである。たとえば、「慢性咳嗽への吸入合剤処方の注意点」とか「軟骨再生の概要と応用の可能性」とか。医学に関する質疑応答は、勉強になるもの、興味深いものはあれども、「面白い」とまでは言えない。「面白い」質疑応答は、「雑件」として分類される、医学とは無関係なものである。たとえば、このような質問。





さつま芋の長期保存法について*1



なぜ、医師向け雑誌でさつま芋の長期保存法についての質疑応答が載るのか。おそらくは歴史的な由来があると推測される。現在であれば、このような疑問はインターネットで検索すれば容易に答えが得られるが、昔はそうではなかった。日本医事新報は、わりと歴史のある雑誌である。最初は医学的な質疑応答のみであったのが、ちょっとした疑問に対する回答にも答えるようになったのではないか。ネットが普及した現在でも、読者がすべてネットを活用できるわけではないので、まだしばらくは「雑件」での面白い質疑応答は載り続けるだろう。

慢性咳嗽への吸入合剤の質問には、呼吸器科の医師に回答をもらえばいい。では、さつま芋の長期保存法については誰に聞けばよいのか。「雑件」に分類される質疑応答は、ほとんどの場合、(係)が回答者となっている。編集部の係の人が回答しているのだ。現在であればネットを駆使すれば回答を得られるが、ネットが普及していなかった頃は、(係)の中の人は大変だったであろう。いまでも、結構大変かもしれない。他に、このような質問がある。







ビッグバン宇宙論について分かりやすい解説を*2

本を読んだほうがいいと思う。






じゃんけんの掛け声*3

「我々の頃は」とあるが、質問者はご年配なのだろう。(係)は、「最初はグー」の始まりが「8時だョ!全員集合」であり、「テンポとリズム感でじゃんけんの出だしの言葉として一般的になったようで現在も使用されていると思われる」と回答している。





太陽の未来と地球上の種の維持*4

日本医事新報は最近リニューアルされて横書きとなった。大震災の影響もあったのか、リニューアル後しばらくは「雑件」の質疑応答がなかった。質疑応答の伝統が途絶えるのが懸念されたが、杞憂であったようだ。この質問に対しては、「雑件」なのにも関わらず、専門家(名古屋大学大学院理学研究科教授)が回答している。「宇宙物理学的な側面からみれば、およそ60億年後までが妥当であると言える」との、わりとはっきりした答え。





鼻が歌詞に使われない理由*5

そんなことを知りたい理由をこっちが知りたい。(係)は「ご質問の意図が不明である」としつつ、「鼻自体では感情や表現が伝わりにくいと作詞する側で考えられているためではないかと思われる」と回答している。


良縁求む

日本医事新報には、「常勤・パート医師募集」「島根県は意志を求めています!」といった求人広告欄の片隅に、求縁広告も掲載されている。以前は、後継ぎのいない開業医が医師の婿を探すというものが多かったようだが、最近はそうとも限らないようである。





35歳迄見目麗しい女性望*6

連絡先はオープンになっておらず、()内の広告ナンバーを編集部に問い合わせるようになっている。


*1:No 4535 日本医事新報

*2:No 4519 日本医事新報

*3:No 4499 日本医事新報

*4:No 4544 日本医事新報

*5:No 4527 日本医事新報

*6:No 4503 日本医事新報